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しおりを挟む邸に帰るとシロカが帰りを待っていた。
「お帰りなさいませお嬢様」
「ただいま」
疲れた表情をするシロカに何かあったか聞こうと思ったが。
(無粋ね…)
なんとなく察しがついたので聞くのを辞めた。
「お嬢様、下町で買われたのですか?素敵なお洋服にお帽子にですわ」
「ああ、これね」
出先でオズワルドが買った帽子だ。
普段来ているドレスとは異なり動きやすさを重視しているが、アクセントをつけたコサージュが特徴的だった。
「普段の装いと奮起がガラッと変わっていますが…すごく素敵ですわ」
「今度、このワンピースで…」
「シェリー、帰っていたのか」
そこに現れたのはラインハルトだった。
「お祖父様、ご無沙汰しております」
「ラインハルト、元気そうだな」
「お祖父様も相変わらずでございますね」
二人は笑みを浮かべながら抱擁を交わす。
幼少期から英才教育を受けていたラインハルトは領地にて勉強する時はオズワルドに勉強を見て貰っていた。
ラインハルト自身もオズワルドを師と仰いでいたのだ。
「お前も一緒に連れて行きたかったが、今は他に優先して学ぶことがあるからな」
「はい、心得ております」
「しかし、部屋の中で本ばかり読んでいてはいかんぞ?体が弱くては意味がない」
「痛い言葉ですね」
同年代に比べればラインハルトは小柄だった。
幼少期は体が弱かった事もあり領地で過ごして今は健康的になったのだ。
「体調管理を怠らぬように、外に出て太陽の光をしっかりあびるのだぞ。不健康だからな」
「はい」
「ちなみに私は健康的でいるべく毎日乾布摩擦をしておる」
「「え…」」
初耳だった二人は一瞬想像してしまった。
普段は紳士的なオズワルドからは想像できなかった。
「ラーモよ、久々にするぞ」
「旦那様、朝にされる方が良いかと」
「むっ…では明日は釣りに行くとしよう」
健康維持のために色々な趣味を持つオズワルド。
その趣味の大半は貴族ならまずしないことが多かったのだが。
「行きたいです」
「そうかそうか…本当に良い子に育ったものだ」
オズワルドは嬉しそうに笑顔を浮かべながらシェリラの頭を撫でる。
(お祖父様の手…)
優しい温もりに包まれながら幸福感に包まれていたシェリラだったが。
「お待ちくださいミレーヌ様!」
その幸福な時間を壊すかのように声が響く。
「お姉様!」
「ミレーヌ?」
ドレスの裾を乱しながらミレーヌがその場に現れたのった。
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