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しおりを挟む貧民街と呼ばれる街で一番貧しい町では想像を絶する生活をしている民が多かった。
特に孤児が多く、住む場所も酷かった。
「お祖父様…」
「ここは病院だ」
「病院って…」
木造でできた古いベッドと水が置かれているだけだった。
不衛生で、寝込んでいる子供達に絶句するシェリラは空気に耐え切れなくなり口元をハンカチで押さえる。
「国内にはこのような病院は多い…病院とは名ばかりの隔離する施設だ。病を外に出したくないからな」
「そんな…」
貧民街と下町の間には壁がある。
その壁で閉じ込め貧民街の人間は知られる事無く死んでいくだけだった。
「私達の寄付は…」
「貧民街にまで及ばないよ。一時の支援なんて意味がないからな」
「だからって…」
こんな酷い暮らしをしている民がいあるなんて知らなかった。
巻き戻る前の時間も慈善活動をしていたが、書類にも報告はなかった。
「一時の援助ではどうにもならない。国から彼等を援助できるようにしなくては…だが国の税金を支払っているのは貧しい民達だ」
「はい…炊き出しなどしても費用がかさむだけです」
前世でも炊き出しの案は出されたが、財務大臣が良い顔をしなかった。
シェリラも賛同できず止めようとしたが、リシャールは民の為に援助するのは当然と言われたのだ。
『民を援助するのは当然だろう』
『ですが一時的な援助など意味がありません。税金で等』
『お姉様、あんまりですわ。民は死んでも良いと…なんて酷い事を』
『ミレーヌはこんなに優しいのに!君は!』
シェリラは重税で苦しんでいる民をさらに苦しめる事をせずに貴族からお金を出させるか。
公的なお金を使い援助をすべきだと思っていたのに、リシャールはただ善意で炊き出しをして貧しい民を救えばいいと思っていた。
そのお金は何処から出るか解っていたのか。
「お祖父様、例え炊き出しや援助をしても…意味がありませんね」
「ああ、万一多額の寄付をしても彼等の手元には来ないだろう。来たとしても維持的な援助が意味がない、自己犠牲等の援助も意味がない」
国が公的に援助するか。
もしくは別の方法で長期で援助する方法が必要だった。
「以前から猊下が別の形で貴族から税を取る法案を考えていらした。普通に税金を支払えと言っても納得しないから、贅沢品の税を増やす取り組みだ」
「それって…」
前世では十年後に正式に採用された物だった。
こんな早い段階から会議に持ちこんでいたとは知らなかったシェリラはこうしてはいられないと思った。
「お祖父様、サロンへ行きましょう」
「ん?」
この現状を打開するべくシェリラは行動すべく馬車を走らせるのだった。
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