愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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それはある昼下がり。
美しい白百合の花が届けられた。


「これは…」

「なんと見事な」

女性が好まれるのは薔薇が多いが、白百合も同じぐらい人気がある。
ただし、薔薇よりも生産の数が少なく希少価値が高かった。

特に純白の色は混じりけのない愛情を向ける意味合いがある。


「素敵…」

「それはようございました」

侍従は嬉しそうに微笑みながら花束を受け取ろうとしたが。

「すごい花束!」

「ミレーヌ」


花束を受け取ろうとしたら、ミレーヌが広間に現れる。

「青いリボンに白い百合…もしかして殿下が」

「左様でございます」

「わぁ、素敵!」


きゃっきゃっと騒ぐミレーヌに侍従は眉を顰めた。
幼いとは言えど、七歳にもなれば多少の礼儀は覚えるし、王宮の使いの前で礼儀を欠くのは恥を晒す行為なのだ。



「きっと私に…」

花束を受け取ろうとするミレーヌだが。


「聖書?私は本は嫌いなのに…それになんでこんな汚いの」

「ミレーヌ!それは聖書よ」

「フーン。私要らないからお姉様にあげるわ」


古びた本は汚いと感じたのかそれを放り投げるも。


「聖書を乱暴に扱うのは止めなさい!なんて罰当たりな」

聖書を急いで拾いながら睨みつける。


「酷いわお姉様、そんな怖い目で見るなんて」


「ミレーヌ…」


「ひっく…ふぇぇぇ!」

大きな声で泣きはじめるミレーヌの声に気づいたのか、タイミング悪く悪く現れたのはミレアルだった。


「お母様ぁぁ!」

「まぁ、ミレーヌを泣かせたのね…貴女は姉なのに!」


結局何も変わらないのか。
こうなる事は解っていたのに。


「お待ちください奥様、シェリラ様はミレーヌ様が聖書を投げ捨てた事を指摘されたのです」

「聖書ぐらいで何だと言うの!妹を泣かせるなんて…聖書ぐらいどうでもいいでしょ!」


――聖書ぐらい?


その言葉は許せなかった。

「聖書は神の教えが記されている大切な書物です。先人の方々が大切にされた物をミレーヌは汚したのです。お母様は先人の方々の信仰心を踏みつけるるおつもりですか!」

「なっ…」


「神に対する冒涜ですわ。間違いを正すのは姉の勤めです…それの何がいけませんの?」


無関心でいようと思った。
今さら何とも思わないと思ったが失望と落胆が軽蔑の眼差しに変わる。


その目を見蹴られた瞬間。


「なんて事を!」


パシーン!


勢い余ってミレアルはシェリラを平手内をした所為で床に倒れこむ。


「きゃああ!お嬢様」

「シェリラ様!」

「あっ…」


平手打ちをされ床に倒れるシェリラを侍従は支える。


「侯爵夫人、貴女はなんて事を…」

「見苦しい所を…」

ハッと我に返ったのか直ぐに侍従に詫びるが。

「娘の無礼をお詫びし…」

「シェリラ嬢は王家の聖書を汚いと口汚く言い放った妹君に注意をしたのです。猊下からの贈り物を汚いとおぅしゃりあの方の思いを踏みにじった妹君を」

「え…」


「そうです。私も見てました…シェリラお嬢様は王家からの贈り物を乱暴に扱われるミレーヌお嬢様を注意こそしされましたが厳しい事言っておられません」


「私もしっかり聞きました!」


その場にいた使用人は口々にシェリラの味方をした。

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