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しおりを挟む派手に着飾り、気合の入った装いで現れたミレーヌ。
「やぁ、ミレーヌ嬢」
「ご機嫌麗しゅうございます」
今はレッスン中なのに何故か派手に着飾るミレーヌを見て遠い目をする。
「ミレーヌ、お勉強の時間では」
「殿下がいらっしゃるのですから優先するのは当然ですわ」
そう言いながら二階を見ると、新しい家庭教師が見える。
他にもバタバタする侍女が目に入り、抜け出して来たのは明白だった。
「シャル様、よろしければお部屋に参りませんか。私と…」
「いや、僕は」
「先日は楽しゅうございましたわ。シャル様は私を可愛いとおっしゃってくださって…お姉は話しにくいと言ってましたから!」
「そうですか…」
「いや、確かにそうだが」
「私との一緒の方が楽しいとおっしゃってくださいましたし。私がお相手しますわ!」
ぎゅっと腕にしがみ付く。
前にも似たような事があった。
あの時は――。
『ミレーヌ、無礼でしょう!』
『そんな酷いわ…』
『今は勉強の時間です。勉強をサボるなんて…』
『そんな言い方はないだろう』
前回の失態を思い出し言葉を選ぶことにした。
「殿下、私は先に使用人に伝えてきますので…」
「シャル様のおもてなしは私に任せてください!そうだ、代わりに先生のお相手をしてくださいな!お姉様はお勉強がお好きですものね!」
「そうね…」
勝手な事を言い、無理矢理リシャールの腕を引っ張って行く後ろ姿を見てお辞儀をして、その場を去った。
去り際にリシャールが助けて欲しそうな表情をしていたとは気づかずにいたシェリラはそのまま邸に戻り、ミレーヌを探している侍女に声をかける。
「お嬢様?」
「シロカ、先生はどちらに?」
「応接間に」
恐らく侍女達が探している間に応接間に待たされているのね。
「失礼します」
「シェリラ?」
「ミレーヌの新しい先生ですね・お初にお目にかかります。姉のシェリラでございます」
ソファーに座る家庭教師に挨拶をする。
幼いながらに所作が完璧なシェリラに感心しながらも家庭教師も挨拶をする。
「初めましてレディーシェリラ。スーザン・メーヤと申します」
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「なっ…」
「殿下が御望みでしたので、ミレーヌがお相手を。スーザン先生、誠に申し訳ありません」
無礼な真似をしてしまった事をお詫びするも、スーザンは笑みを浮かべた。
「殿下のお相手をされているのでは致し方ありませんわ」
「そう言っていただけると助かります」
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敵にすればどんな誹りを受けるが前世でも痛い程理解しているのだが…
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厳しが愛情深い女性で一か月だけ所作のレッスンをしてくれたスーザンを見ると懐かしさと切なさが込み上げて来た。
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