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しおりを挟む一緒に勉強をしながら、話をして楽しい時間を過ごす。
「お兄様、袖が」
「あ…しまった」
袖のボタンが外れてしまっているのを見てシェリラは傍にある裁縫道具を手に取る。
「脱いでください」
「え?」
「私が…」
自然なやり取りであったが、後から気づく。
貴族令嬢。
しかも子供が刺繍などできないのだ。
「申し訳ありません!」
「シェリー、頼めるか?」
「はい」
申し訳なさそうな表情をするシェリラにラインハルトは上着を脱ぐ。
「シェリーは器用だね」
「そうですか」
「ああ、お前は音楽も得意だし、芸術の才能は誰よりもある。王弟殿下がおっしゃってただろう?」
現国王陛下の実弟。
王弟殿下で中央神殿を預かる人物でもある。
生まれながら神の言葉を賜る力を与えられている。
シェリラにとって年の離れた兄のような存在で王宮で味方の少ないシェリラの数少ない味方だった。
「ミサでオルガンを弾いて差し上げるんだ」
「はい」
時折ミサに参加してオルガンを弾くと喜んでくれたの思い出す。
美しい容姿とは裏腹に、舞踏会のような華やかな場所は得意ではないので滅多に舞踏会には参加しなかった。
噂ではダンスが踊れないと言われているが、シェリラは知っていた。
すべては噂であることを。
「猊下…」
「まるで恋する乙女だな」
「なっ…違いますお兄様!あの方は神の代弁者である尊い方ですのよ!」
穢れを許されない猊下に恋慕の情を抱くなんて許されない。
「私にとってこの世で最も敬う存在で。憧れの方です」
教養高く慈悲深い。
政治にも口出しはしてもあくまで国と民の為だった。
説得力もあり、宰相顔負けなのにすごく控えめで。
シェリラの大好きな物語に出て来る天使様そのもので、もし地上に天使様がいたらと思う程だった。
「脈はあると思うけどね」
「お兄様!失礼ですわ」
「そうか?」
「できましたよ」
袖のボタンをつけなおし終えたシェリラは怒りながら上着を差し出した。
「上手いな」
「そうですか?」
子供が直したとは思えない程だった。
前世で覚えたスキルは身についていた事を良かったと思いながら…
(学んだことは邪魔にならないなら…)
全ては誰かの為に努力していたが、自分の為に努力してみようと思えるようになったシェリラだった。
そしてその翌日。
「お嬢様!」
「ん?」
「王宮からお手紙が」
シロカが持って来た手紙を見て冷や汗が流れそうになった。
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