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しおりを挟む無理を続け、それでも自分の能力を過信し続けていたシェリラは前世で体が小さかった。
医師には子供ができにくい体になってしまっているので無理な淑女教育は止めるように言われたが辞めなかった。
もっと頑張れば。
努力が足りないから母は愛してくれない。
毎日毎日地獄のような特訓を受けて、成果を出しても。
「この程度できて慢心するのではありません。できて当然です」
「はい…」
そう言われながらも内心では苛立ちを感じていた。
(お母様だってできなかった癖に!)
自分ができなかった事を娘に強いてできて当然だと冷たい言葉しか投げかけなかった母に絶望していた。
「シェリラ、起きていて大丈夫かのかい」
「お兄様、お勉強は…」
「ここですればいいさ。人に教えるのも勉強になるからね」
シェリラ以上に跡継ぎとして学ぶことが多いおラインハルトは課題が沢山なのにと申し訳なく思う。
「それに、一人で勉強するよりも捗るし…サボれるから」
「お兄様ったら」
本をどっさり置く中にお菓子の本が置かれていた。
「まぁ、マカロン」
「今度作ろうと思ってね」
「お母様にバレたら叱られますよ」
「大丈夫だろ?ミレーヌと出かけている間にすればバレないよ」
苦笑しながら言うラインハルトは何処か寂しそうだった。
「お兄様…」
「僕は平気だよ。お前程じゃない」
「私は…」
寂しいなんて言えなかった。
前世でも少しの我儘も許されないのだから。
「一度でいいから、優しく名前を呼んで欲しかった」
「シェリー…」
「それすら我儘なのでしょうか」
偽りではなく本心だった。
頑張れば認めてくれる。
喜んでくれると思ったのが愚かだったのか。
「シェリラ」
「お兄様…」
「名前なら僕が呼ぶよ」
優しいお兄を思いながらも後悔が消えなかった。
優し過ぎた兄はシェリラを庇った所為で謹慎の身となった。
『シェリー。耐えるんだ…必ず迎えに行く』
『お兄様!』
『僕が必ず!』
最後の日に約束をした後に、無理矢理領地に送られた。
だけどその約束は果たされることはなかった。
シェリラは自分の死後の世界を知らない。
だけど責任感が強くて優しい兄が傷つかなかったわけじゃない。
だから二度と過ちを犯さない。
「お兄様、私は王太子妃に相応しくありませんわ」
「シェリラ?」
「常日頃からお母様も言っていらしたもの」
「そんなことを!」
もっと努力をしろ。
王太子妃として完璧になりなさい。
妹を家族を大事にしなさい。
そう言われて来た。
だけど完璧になっても無駄。
何をしても愛されないことを知ったから愛されることを望むのはしない。
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