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しおりを挟む一度も泣く事がなかったシェリラが涙を見せ明らかな拒絶反応を見せた事に二人はショックを受ける。
ライオネルは医師に事情を聴くと。
「お嬢様は過労とストレスによるものです」
「なっ…」
「なんて軟弱な。そんな事では困りますわ」
「ミレアル!」
余りないい様にライオネルは初めて妻に怒鳴り声を上げた。
「それに極度の睡眠不足に、コルセットの絞めつけ過ぎで成長に影響が起きていますね。侍女から聞きましたが食が細すぎます」
「それはあの子が偏食が酷くて」
「偏食ではなく胃が受け付けないのかもしれませんね。一緒に食事をされたのは何時ですか?」
「えーっと…」
何時だったか覚えていないミレアルは口ごもる。
食事所か的に会話した記憶を思い出せないでいたのだ。
「これではこうなっても仕方ありませんな」
「そんな!」
宮廷医師でもあ彼は思いため息をつく。
まだまだ両親の愛情が必要な時期なのにここまで酷いと思うと哀れに思った。
「失礼します」
「ラインハルト!」
「先生、妹は少し落ち着きました」
「そうですか。ラインハルト様には心を許しているようですな」
医師の言葉は痛かった。
顔を見て恐れるように泣き出した娘を思うとライネルは胸が苦しかった。
「先生、妹は病気なのでしょうか」
「大丈夫ですよ。ストレスによるものです。心の負担が大きいのです」
「ストレスですか…ではしばらく療養させる方が良いですね。母上、しばらく僕の部屋で寝かせます…精神が安定するまで。いいですね?ミレーヌは時折母上と寝ているのですから」
「ミレーヌは…」
「シェリラと一つしか変わりません」
きっぱり言い放つラインハルトは反論も許さないと言う顔をした。
「それから父上」
「何だ?」
「いくらミレーヌを贔屓しているからと言って、あんまりではありませんか」
「私はそんなつもりは…」
「失礼します」
視線を合わせる事もなく、冷たく言い放ち、部屋を出て行く。
***
「美味しい」
「そうか、もう一つ食べろ」
部屋に戻ったラインハルトは慣れた手つきで桃の皮を剥いて行く。
「お兄様、上手ですね」
「この程度はできるさ」
綺麗に切り分けた桃を食べさせてもらって幸せそうにするシェリラを見てラインハルトは安堵する。
「お前は頑張り過ぎたんだ。もう頑張らなくても良い」
「お兄様」
「僕がいる」
優しい手が傷ついた心を慰めてくれる。
小さいけどこの温かさが救いで、どれだけ救われたか解らない。
「今はゆっくりお休み」
目を閉じてシェリラは夢を見た。
悲しい夢を。
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