愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

文字の大きさ
上 下
2 / 159

しおりを挟む



神はどうして人に記憶を与えるのだろうか。

どうして心を与えたのだろうか。


貴族の中でも長い歴史を誇る大貴族のノースライナ侯爵家。
そに家の長女シェリラは生まれた時から王太子殿下の婚約者になる事を義務付けられていた。

今年で10歳になる。
そろそろという事で正式に婚約をと打診があった。

社交界でも優秀だったシェリラは王宮に挨拶に向かった後に邸に帰って来たが。


待っていたのは母の叱責と夜遅くまで淑女教育の強化だった。
今に始まった事ではないが成長期の子供にはあまりにも厳しもので、極度の緊張で疲れていたシェリラは疲労困憊の末に、倒れてしまったのだ。


しかし父親はもう一人の妹が舞踏会に出るので付き添い、母親も熱さえ下がれば問題ないと突っぱね三日間見まいすら来なかった。

傍付きの侍女はシェリラの待遇の酷さに訴えるも、使用人の言葉など聞き入られることはなかった。


そして今――。


「んっ…」

「お嬢様?」

「だ…れ?」


「シェリー!」

部屋に押し入って来たのは兄のラインハルトだった。


「お兄様…」

「良かった。三日間ずっと意識を取り戻さなかったんだ…医師は疲労と過労だと言っていたんだ」


シェリラを優しく抱きしめるラインハルトの手は震えていた。

「ごめんシェリー、僕が甘かった。強引にでも言えばよかった」

「おに…さ…」

「どうしたんだ?何処か痛いのか?」

普段絶対に泣く事がないシェリラが涙を流した事でラインハルトは驚く。

「そんなに辛かったんだな。そうだな…お前はまだ八歳だもんな」

「えっ?」

ラインハルトの言葉に固まった

涙も引っ込む程だったのだが、鏡に映る自分を見て呆然とする。


何故なら鏡に映る姿は子供だったからだ。



それから一週間後。
ラインハルトは急いで祖母に連絡をした。

両親が戻って来たのはシェリラが目を覚まして二週間後になる。


「ラインハルト!」

「大きな声を出さないでください。シェリーが怖がっているではありませんか」


「シェリラ…」


父であるライオネルは直ぐに近づこうとしたが。


「いやぁ!来ないで!」


バシッ!

悲鳴を上げ、シェリラは怯え、過呼吸になる。


「シェリラ!なんて事を…」

「まてミレアル!」

「はっ、はっ…はっ!」

「お嬢様!」


過呼吸で上手く呼吸ができないシェリラは胸を抑え込む。

「おに…さ…いや…怖い!怖い!」


あの恐怖の記憶がシェリラを苦しめ、ラインハルトは二人を睨みつけ、退出するように告げたのだった。


しおりを挟む
感想 635

あなたにおすすめの小説

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス
恋愛
私の名前はレイラ・カストゥール侯爵令嬢で16歳。 この国である、レントグレマール王国の聖女を務めております。 生まれつき膨大な魔力を持って生まれた私は、侯爵家では異端の存在として扱われて来ました。 そんな私は少しでも両親の役に立って振り向いて欲しかったのですが… 両親は私に関心が無く、翌年に生まれたライラに全ての関心が行き…私はいない者として扱われました。 そして時が過ぎて… 私は聖女として王国で役に立っている頃、両親から見放された私ですが… レントグレマール王国の第一王子のカリオス王子との婚姻が決まりました。 これで少しは両親も…と考えておりましたが、両親の取った行動は…私の代わりに溺愛する妹を王子と婚姻させる為に動き、私に捏造した濡れ衣を着せて婚約破棄をさせました。 私は…別にカリオス王子との婚姻を望んでいた訳ではありませんので別に怒ってはいないのですが、怒っているのは捏造された内容でした。 私が6歳の時のレントグレマール王国は、色々と厄災が付き纏っていたので快適な暮らしをさせる為に結界を張ったのですが… そんな物は存在しないと言われました。 そうですか…それが答えなんですね? なら、後悔なさって下さいね。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので

白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。 婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。 我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。 詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...