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しおりを挟む神はどうして人に記憶を与えるのだろうか。
どうして心を与えたのだろうか。
貴族の中でも長い歴史を誇る大貴族のノースライナ侯爵家。
そに家の長女シェリラは生まれた時から王太子殿下の婚約者になる事を義務付けられていた。
今年で10歳になる。
そろそろという事で正式に婚約をと打診があった。
社交界でも優秀だったシェリラは王宮に挨拶に向かった後に邸に帰って来たが。
待っていたのは母の叱責と夜遅くまで淑女教育の強化だった。
今に始まった事ではないが成長期の子供にはあまりにも厳しもので、極度の緊張で疲れていたシェリラは疲労困憊の末に、倒れてしまったのだ。
しかし父親はもう一人の妹が舞踏会に出るので付き添い、母親も熱さえ下がれば問題ないと突っぱね三日間見まいすら来なかった。
傍付きの侍女はシェリラの待遇の酷さに訴えるも、使用人の言葉など聞き入られることはなかった。
そして今――。
「んっ…」
「お嬢様?」
「だ…れ?」
「シェリー!」
部屋に押し入って来たのは兄のラインハルトだった。
「お兄様…」
「良かった。三日間ずっと意識を取り戻さなかったんだ…医師は疲労と過労だと言っていたんだ」
シェリラを優しく抱きしめるラインハルトの手は震えていた。
「ごめんシェリー、僕が甘かった。強引にでも言えばよかった」
「おに…さ…」
「どうしたんだ?何処か痛いのか?」
普段絶対に泣く事がないシェリラが涙を流した事でラインハルトは驚く。
「そんなに辛かったんだな。そうだな…お前はまだ八歳だもんな」
「えっ?」
ラインハルトの言葉に固まった
涙も引っ込む程だったのだが、鏡に映る自分を見て呆然とする。
何故なら鏡に映る姿は子供だったからだ。
それから一週間後。
ラインハルトは急いで祖母に連絡をした。
両親が戻って来たのはシェリラが目を覚まして二週間後になる。
「ラインハルト!」
「大きな声を出さないでください。シェリーが怖がっているではありませんか」
「シェリラ…」
父であるライオネルは直ぐに近づこうとしたが。
「いやぁ!来ないで!」
バシッ!
悲鳴を上げ、シェリラは怯え、過呼吸になる。
「シェリラ!なんて事を…」
「まてミレアル!」
「はっ、はっ…はっ!」
「お嬢様!」
過呼吸で上手く呼吸ができないシェリラは胸を抑え込む。
「おに…さ…いや…怖い!怖い!」
あの恐怖の記憶がシェリラを苦しめ、ラインハルトは二人を睨みつけ、退出するように告げたのだった。
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