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第一章
閑話2レンズ越しに
しおりを挟むシンの言葉に誰もが耳を疑う。
女性と話をする時は作り笑顔を浮かべても楽しそうにすることはなかった。
「間違いありません」
「とにかく映像を」
魔道具を取り出し、シンが見た映像を映し出すと。
「殿下が普通に女性と会話を」
「社交辞令以外で…」
「我らを挟まずに!」
一同大袈裟に喜ぶが、彼等にとってそれほど嬉しい事だった。
ここ数年程は近衛騎士団は既婚者の女性以外は関わる事はなかった。
勿論世話をする侍女は年配だった。
シリウスの事を考えての配慮だが、近衛騎士にはまだまだ若い男性が多く。
正直、若い女性と関わりたいと思っても不思議ではない。
「母上、どうされました?」
「あの方は、アトラス様のご息女のアリアドネ様?」
「アトラス殿は確か…」
レオナルドはそれ程親しいわけではないが、アトラスの事は知っていた。
辺境伯爵で、第二騎士を任されている貴族だった。
早くに妻を亡くすも再婚は望まない変わり者と言われている。
「どのような方ですか」
「織物姫の噂は知っていて?」
「ええ…優れた銀刺繍ができる姫君で」
「それは一部よ。社交界では貧しい領地を潤す為に邸に引きこもり機織りばかりしている引きこもりで糸くずだらけの姫と言われているのよ」
「何と無礼な!」
領地を守る為に機織りをする令嬢を侮辱する等許されなかった。
「社交界もあまり出ない所為で周りから軽んじられているのよ」
「年頃ならば婚約者はいるのでは?」
「その婚約者は他の女性にお熱で放置だそうよ」
この時近衛騎士達の怒りは最高潮に達した。
騎士の誉れと言われる近衛騎士団は騎士道を貫き紳士的だった。
どんな時も紳士的に振舞い、女性に恥をかかせる行為をする男は許せなかった。
許されるものではなかったと同時にアリアドネを不憫に思うのだった。
「何ですかその男は」
「男として認められません」
「そうだわいい考えがあるわ」
閃いたと言わんばかりに告げたのは。
「彼女にお願いしたらどうかしら」
「母上?何を…」
「殿下が嫌悪感を抱かず傍にいてくれる女性。尚且つ地位、権力に一切興味がない父君。理想的ではなくて?」
「確かにアトラス様は出世欲はない根っからの騎士だと聞いています」
全てに置いて条件を満たしている。
王都から離れた辺境地から出る事はほとんどなく、シリウスの事は知らないだろう。
「よし、こうなったら最後の砦だ」
こうしてアリアドネを仮初の婚約者に選ぶ事になったのだった。
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