10 / 13
第一章
9再会
しおりを挟むまさか本当に婚約者の入れ替えをすることになるなんて。
「最初は辺境地に住まう姫君を選ばれたのです」
「ですが、殿下の拒絶反応が酷く。当人も顔合わせをする前に嫌がられまして」
「一国の王太子殿下をですか?」
普通は無理だろうと思うが、そこには理由があった。
「殿下も配慮をされて、正式な申し込みの前に交流をされたのです」
「魔力を封じて、少し変装をしてですが」
「ですがあの小娘!殿下の容姿だけでなく趣味までも侮辱する始末です!仮初であろうとあんな非常識な女が婚約者などありえません!」
ラリシア…。
一体何を言ったのか。
「殿下も努力なさっております。先月も辺境地の舞踏会に参加していたのですが」
「先月?」
「ええ、とある子爵家の舞踏会です」
私も参加した舞踏会だ。
まぁ、壁に花でダンスも踊らなかったけど。
そう言えばあの人はどうしているだろう?
壁の花である私を気遣って傍にいてくれた優しい男性はどうしているだろうか。
「さぁ、どうぞ」
「はっ…はい」
いけないわ。
今から王太子殿下に対面するのに他の男性の事を考えていては。
「ようこそお越しくださった」
「はい」
「顔を上げて欲しい」
優しい声だった。
だけど、この声は聞いた事がある。
顔を上げるとそこには。
舞踏会で偶然出会ったあの方だった。
「アリアドネ嬢」
「はっ…はい」
「この度は無理を言ってすまない」
「王太子殿下ともあらせられる方が頭を下げてはなりません。どうか」
なんとの地位もない私が王太子殿下に頭を下げていただくなんて恐れ多い。
「殿下…」
「シリウス・エレンフリートだ」
あの時見た時と同じ美しい黒髪に魅せられる。
「アリアドネ・クライアでございます」
「この場にいる者は俺の側近だ。気を使わないでくれ…それよりも今回は手荒な真似をしてすまなかった」
「え?」
手荒な真似って何?
「アトラスに無理を言ったからな…その見返りに出来るだけのことはするつもりだ」
「そんな!私達は国の為、王家の為に尽くすのは当然でございます」
これは嘘じゃない。
辺境貴族は王家の盾となり剣となる存在だった。
だからこそ見返りを求める等論外だった。
「そうか…」
「ですが、王都に来ることができた事は私にとっても幸いであります」
「ならば良かった。君には随分失礼な事を頼んでいる自覚がある。だが俺を見ても平常心を保つ事ができ、尚且つ忍耐力の強い君ならばと思ったんだ」
「殿下、失礼ですよ」
「うっ…悪い意味ではないんだ。それに婚約者に蔑ろにされているならば…一時でも私の婚約者になればと思ったんだ。勿論君に傷がつかないようにするつもりだ」
レオナルド様のおっしゃる通り立派な方だわ。
なのに生まれ持った能力の所為で好きでもない女性を魅了してしまうなんて気の毒だわ。
「精一杯務めさせていただきます。殿下の盾となります」
「ん?」
喜んで殿下の壁になります!
13
お気に入りに追加
1,086
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。


愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

好き避けするような男のどこがいいのかわからない
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
マーガレットの婚約者であるローリーはマーガレットに対しては冷たくそっけない態度なのに、彼女の妹であるエイミーには優しく接している。いや、マーガレットだけが嫌われているようで、他の人にはローリーは優しい。
彼は妹の方と結婚した方がいいのではないかと思い、妹に、彼と結婚するようにと提案することにした。しかしその婚約自体が思いがけない方向に行くことになって――。
全5話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる