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第一章
6王都へ
しおりを挟む私を利用してラリシアを懲らしめようと企んでいた彼女達はその後責められるような視線を使用人達やお父様の部下から向けられすごすごと帰って行った。
「なんて非常識なのでしょう」
「まぁ、そう言わないの」
アンナの言いたいことは解る。
彼女達はラリシアが目障りだったのだから私を助ける振りをしていただけ。
「お嬢様を絵利用しようとしているだけではありませんか」
「まぁね。利用される気はないけど」
彼女達は自分の手を汚したくなくて私を利用しようとしている魂胆が丸見えだった。
万一の時は責任を全て私に押し付けようと考えているのだろう。
本当に不愉快だわ。
「私は別にテネオスとの婚約破棄は気にしていないのに、本当に迷惑だわ」
「ですが、領地にいる限りは…」
「そうよね。煩わしいわ」
この際しばらく身を隠した方がいいわね。
「アリアドネ」
「はいお父様」
「少しいいかい?」
私が憂鬱な日々を過ごしている最中、転機は思わぬ形で起きたのだった。
「え?縁談…ですか」
「困った事になった」
頭を抱えているお父様は断るのが難しい相手らしい。
「いや…だがあの方は!」
一体どういう方なのか。
いくら高位貴族であってもお父様は第二騎士団長と言う立場故に、断れないわけではない。
「少々厄介な方なんだ」
「私に縁談を申し込むぐらいですから」
「そういう言い方をするんじゃない」
既に傷物令嬢の私に縁談を申し込むぐらいなのだから。
「それでその方は王都に住まう方なのですか」
「ああ…しかし本当にいいのかい?」
「はい、かまいません」
お父様が迷っておられるという事は断りにくい相手であると同時に、その方が悪い方ではないという事だ。
きっと見合い相手の方はお父様にとって大事な方なのだから。
テネオスの時だって、私が嫌なら断っても良いとまで言ってくださったもの。
「その話、お受けします」
「お嬢様!よろしのですか…そんなどなたか解らないのに」
「ええ。まぁ先方の方が断られてしまったらそれまでだけど」
そうなったら確実に私は独身貴族を釣らなかなくてはならないのだけど。
だけど…
私はどうしてこの時ちゃんと聞かなかったのだろうか。
見合い相手の身分を――。
「団長、本当によろしいのですか」
「相手は王族だ。断るのは困難だ」
「しかしあの方は…」
「前途多難だな」
ちゃんと確認しなかった私は後々に後悔するのだった。
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