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第一章
3侍女
しおりを挟む私が幼い頃から侍女として傍にいてくれたアンナは姉のような存在だった。
早くに母を亡くした私にとっては姉であり母代わりでもあったアンナは主従関係というよりも家族に近く、私に対して過保護だった。
「調子に乗って!あの馬鹿男!」
「アンナ・・・」
普段は完璧な侍女なのに、ここまで感情的になるなんてとても珍しい事だった。
「お嬢様が何も言わない事を良い事に馬鹿にして。ラリシア様もです!」
「いや、彼女は…」
「お嬢様の婚約者と知りながら、社交界デビューが遅れて不慣れだとお嬢様に頼り、このような!」
幼少期は病弱だった事もあったラリシアは社交界の事を何も知らず、私やテネオスを頼るようになった。
可愛くて甘え上手で無邪気なラリシアは貴族令嬢にしては考え方が幼い。
とは言え、私も人の事を言えなかった。
裕福ではない北の領地は寒さが厳しく、王都とは異なり貧しい。
貴族令嬢でありながら自ら狩りをする事は野蛮だと言う人は少なく無い。
領地が豊かではないかたこそ、私は織物をして収入を得なくてはならないのだけど。
貧乏辺境伯爵令嬢等とも言われ、テネオスは成人してから我が家を恥ずかしいと思うようになった。
「ずっと言っていたものね」
「何をですか」
「私との婚約は望んでいなかった。私はテネオスに釣り合わないと」
バキッ!
「そうですか」
「アンナ!」
今バキッて言った?
手に持っているお盆が真っ二つになっている。
「あら、私とした事が」
いや、素手で割れる程脆い作りじゃなかったと思うんだけど。
アンナは子爵令嬢であるけど、武術の心得がある。
武器を隠し持って、私の護衛も兼任をしているので腕っぷしはその辺の貴族子息よりも良い。
「しかしどういう経緯でそのような」
「本人が婚約者を交換しろと言うから了承したのよ」
「何様ですか!」
アンナの中でテネオスがどういう位置にいるか良く解ったわ。
本来ならば彼は私の夫となり、後の主のなるかもしれないのだけど。
「前から思ったのだけど」
「はい」
「アンナはテネオスが嫌いだったの?」
あまり好きなようには思えなかったので聞いてみると。
本人曰く。
「別に好き嫌いの感情はございません。勿論尊敬もしておりません」
「ソーデスカ」
それって、無関心って事よね?
嫌いって言われるよりも酷いようだけど、何でここまで手厳しいのかな?
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