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第一章
2邸
しおりを挟む婚約者の入れ替えを望まれ、社交界ではテネオスの本命はラリシアだと誰もが思っている。
舞踏会に行けば私は壁の花で、同年代の貴族令嬢に同情的な視線で見られて殿方には馬鹿にされる。
領地にいるお父様には心配させたくない故に言えなかった。
片親で男で一つで育ててくださったお父様。
噂はあくまで噂でしなかく、テネオスもお父様に知られないように。
辺境伯爵であると同時に騎士団の団長をしているお父様は多忙だった。
気に病ませたくはないけど、最悪な教場になる前に手を打った方がいいと思った。
これ以上の悪い噂に、何より騎士を良く思っていないテネオスと上手くやっていける自信が私にはない。
「最悪、奥様を亡くされた殿方でも良いわ」
婚約破棄をされた令嬢は傷物となる。
高位貴族でも訳あり貴族や問題を抱えている貴族に嫁ぐのだから。
「せめて我が領地を受け入れてくださる方なら」
選ぶ立場ではないのである程度は覚悟の上だった。
ただし問題なのは。
「お嬢様!大変ですわ」
「どうしたの?」
普段はノックをして静かに入って来る私の傍付きの侍女のアンナが取り乱した様子だった。
「どうもこうもありませんわ。社交界で不名誉な噂が流れておりますわ」
「噂?」
思いっきり身に覚えがある。
だけどあくまで私の想像に過ぎないので聞いてみたが。
「テネオス様とお嬢様の婚約が破棄され、後釜にラリシア様がと…」
真っ青な表情で言うアンナに私はなんと声をかけるべきか悩んだ。
悲しそうな顔をしてみるか?
いや、心の底からどうでも良い。
むしろ清々しているので無理だわ。
こう見えても十年以上の付き合いだしバレるだろう。
「真実よ」
「あんのぉクソ男!」
「アンナ・・・」
仮にも子爵令嬢がいいのか?
優秀な侍女でおあるのに、そんな汚い言葉を吐くのはどうかと思うけど。
でもそれ程に怒っているのかな?
私とテネオスは幼馴染であるけど、そこまで嫌悪感を抱いていたなんて。
というか嫌っていた?
真実はどうか解らないけど拳を突き上げ、今にも暴れそうなアンナをとにかく宥めよう。
その後のことはゆっくり考えればいいと思ったけど、私の考えは甘すぎたと後々思い知らされることとなるのだった。
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