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第一章
1婚約破棄
しおりを挟むあの夜から一夜明け。
私の生活は変わる事はないと思っていた。
社交界に出れば同年代の令嬢に同情的な目を向けられながらもクスクス笑われる日々。
頼んでもいないのにテネオスの事をあれやこれや言って来るのだから暇人だと思いながらも私は平常心を保つ。
「聞きましてよ、アリアドネ様」
「テネオス様にまたあのような」
「気の毒に、ラリシア様にも困ったものね」
遠回しに婚約者の関心は別の女性に向けられていると馬鹿にしている。
「いくらなんでもねぇ?」
「お気遣い痛み入りますが、社交界に出て日も浅い彼女には頼れる方がいませんもの」
「まぁ!そんな悠長な事をおっしゃってよろしいの?」
「奪われてしまいますわよ!」
私の態度がイマイチだったのか、あれやこれやと余計な事を言い。
本人達は先輩としてアドバイスをしているのだけど、私は知っている。
彼女達も最近は婚約者と上手く行っていない。
なんせ社交界の華となっているラリシアに夢中なのだから。
「ちゃんと釘をさしておかなくては」
「そうですわ!」
「ご心配いただきありがとうございます」
とは言っても私とテネオスの婚約は表向きは政略結婚であるが、気乗りしないならば父は断っても良いと言ってくれていた。
ただ、我が家の為にも政略結婚は必要だった。
何より私はテネオスに対して義理しかないのだから。
幼い頃は優しかったテネオスが好きだったけど、友人以上の気持ちは抱いていないのだけど。
成長する内にテネオスは変わってしまった。
辺境地での生活を恥ずかしいものだと思う様になり貴族令嬢が機織りをするのは良くない事だと言い始める。
だけど私は刺繍や機織りが好きだ。
領地を潤す事が出来るならばこんなに嬉しい事はない。
――領地が貧しく無ければ。
思ってはいけない事を思ってしまう私が行けなかったのか。
それとも私に女性としての魅力が無さすぎる故にだろうか。
「君ではなくラッシーが婚約者だったらどんなに良かったか」
「はぁ…」
またか。
ラリシアと婚約したかったと私に言うのも聞き飽きた。
「本当に可愛げがないな、身なりを着飾る事もせず」
今着ているドレスは母の形見で思い出のある者だった。
「地味で型崩れのしたドレス…みすぼらしい。この際ラリシアと婚約者を変えたいぐらいだ」
「承知しました」
「は?」
「婚約者の入れ替えを望まれるのでしたらかまいません。そうしましょう!」
私の中でテネオスへの失望感は強くなった。
婚約破棄を突きつけられあっさりと受け入れた私はその場から去ることにした。
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