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第二章
30確信犯~ルシウスside
しおりを挟むなんとなく予測はしていた。
貴族令嬢が背後にいると聞いた時に少しだけ調べたが、まさかここまで陰湿な事をしているとは。
万一あの女が黒幕だっったとしても正面からポンチョの敵を取ると言って聞かないグレーテルを止めるのは至難の業だった。
ずっと隠し続けるわけには行かなかった。
だから私は――。
「シアン、確信していただろ」
「何の事です」
「あの老人にあんな聞き方をして」
「ああ…」
今思い出したような言い回しをするシアンは悪びれる事もなかった。
「グレーテル様が余りにも不憫だった故です」
「だからと言って…」
「あのまま姉の本性を知らずにいるよりはマシでしょう?」
とても残酷な形になってしまった。
だが、私も心の底では王都で真実を知って欲しいと思ったんだ。
「酷い男だな、私は」
「私達から言っても納得できないでしょう。故に第三者の口できいた方が納得もできるでしょうし」
「部屋に引きこもっているがな」
グレーテルの心が心配だ。
姉の我儘で身代わりのような形で私に嫁いでからも恨み言一つも言わなかった。
何処かで家族の絆を信じていたかもしれない。
「本当に情けないわね」
「アゼリア!」
「この程度の事で心が壊れる程お姉様は弱くないわ。私の姉なのだから」
「これアゼリア!」
私達の話を聞いてしまったのか。
「お姉様は真実を知っていただく必要があります。今後の為にも」
「だとしても本意ではなかっただろう?」
「私もここまで腐っていると思いませんでしたが、そうなると私の仮説も当たっているのではなくて?」
アゼリアの仮設?
「前オークレ女伯爵様の死因ですわ」
「確か、アミカ夫人の姉君だったな」
「ええ、私はずっと違和感を感じてましたの。アミカ・オークレ夫人とお姉様はまったく面影がないのに対して、伯母君のグレース様とはそっくりでした」
過去の姿絵や写真は残っている。
女性で女伯爵を賜ったぐらいの方だからな。
「少し調べさせましたのよ。そしたらグレーテル夫人はご息女いらしたそうです。ですが病で亡くなったようですが…」
「まさか…」
「グレース夫人の死も当時の調書が処分されているそうですが…出産した病院はありません。医師もその後不慮の事故で亡くなっているのですが」
「不慮の事故?」
「ええ、出産に立ち会った医師や看護師はそろって事故で亡くなってますの」
余りにも好都合だな。
裏がると言っているようじゃないか。
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