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第二章
29現実
しおりを挟むオークル商会はオクレール家が始めた商会だった。
元はグレース伯母様が始めたと聞いたことがあるけど、私が幼い頃には商会は傾き職人も殆どいなかった。
経営方針もかなり変わったと聞かされていたけど。
「どうして…」
お爺さんは意識がはっきりし、体調も落ち着いた事から話してくれた。
「オークル商会は昔の面影はなない。グレース様の時はこんな商品を売らなかったんだが…宝石商や服飾関係を閉じて、流行ると思って飲食に変えたのだろうな」
「私達も買う気はなかったんだが…無理矢理買わされたんだ」
「サクラですか」
「ああ」
流行らせるにはサクラの存在は必要だ。
客を装い売り込む事で商品の良さをアピールできる。
「毎日のようにこんなまずい物を食べさせられて…」
「昨日から腹の具合が悪くてな…だが、アルミナお嬢様の命令に逆らえばどんな目に合うか」
「一度逆らった御者が殴られ、川に捨てられた事もある。本当に恐ろしい人で」
お姉様がそんなことを?
体が弱くて病弱なお姉様が?
「奥方のアミカ様も平民の私達等ゴミ以下だろう」
「だけど、ご息女はお体が弱いのでは?」
「は?あれの何処が弱いんだ」
「心臓が弱いなんて噂嘘だろ?昼間っからシャンパンを飲んで肉をかぶりついでるのを見たぜ。男に貢がせるd替え貢がせる寄生虫だろ」
「食虫植物とも言えるな」
お爺さん達の話を聞いて私は眩暈がした。
「グレーテル!」
「すいません…」
頭が痛い。
今まで病弱だと聞いていたけど私は――。
「まぁ、病気と言えば病気だよな」
「精神を病んでいるんじゃないかって話は聞く…先日の食の祭典でも他の店に異物混入をしたりして、妨害をしていたよな。嫌がらせをしてわざと怒らせたりして」
「やはり食の祭典は…」
「ああ、審査員を入れ替えたんだ。金を使って…本来ならありえないのだが」
「アルミナ様は恐ろしい女だ。あの人は審査員の飲み物に薬を入れて審査できない状態にした」
なんて事をしたの!
食べ物に異物を購入したり薬を混ぜるなんて。
「しかし証拠はあるのでしょうか」
「シアン…」
「もしかたら、アルミナ様は罪を着せられた可能性もありますわね?噂では婚約者がおらっしゃるとか」
私がぐるぐる悩んでいる最中、シアンがお爺さんに尋ねるも。
「ああ、婚約者なんていないぞ」
「前にいたらしいが…捨てられたって聞いたぜ」
「可哀想によ。借金の連帯保証人されて、身ぐるみ剥がされて捨てられたらしい。これは確かな情報だ」
ハワードが捨てられた?
二人は愛し合っていたんじゃなかったの?
私は二人が幸せになっていると思った。
なのに現実はなんて残酷なんだろうか。
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