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第二章
28食中毒
しおりを挟む悲鳴が聞こえる方に向かうと真っ青な顔色で嘔吐する老人。
「大丈夫ですか!」
「うっ…胸が痛い!」
胸を押さえながら苦しそうにする老人。
傍にいる人も倒れこんでいる。
「これは…毒か」
「いいえ違います」
この症状は前にも似たような…
「聞こえますか!聞こえますか!」
「うっ…」
「グレーテル!毒ならば近づいては…」
「毒ではありません」
意識はある。
小声であるが、耳を傾け口にした物を聞くと。
「このホットドッグを食べたそうです。恐らく食中毒です」
「食中毒?」
「このホットドッグに挟まっている魚の鮮度です」
魚は痛みが早いが、魚だけでなく肉類も同様だ。
「このホットドッグの成分を調べてください…サバが使われていたら確実に当たっています」
王都にいた頃に市場で魚を売っていたお婆さんに聞いたことがある。
東帝国で食べられている魚の中に油の多いサバは家格も安いが、足が早く。
食あたりになることが多い。
故に完全に加熱して使わないといけない。
もし生を使っていたら?
「ううっ…」
「シアン」
「はい!」
「あれを持ってきて」
「かしこまりました」
ハンバーガーと一緒に商品開発したあの飲み物があったはず。
「お持ちしました」
「ありがとう…さぁ、ゆっくりのんでください」
飲みやすいように頭を少し上げてゆっくり飲んでもらう。
最初こそはゆっくりだったけど、自分で全部飲んでくれた。
「嬢ちゃん!」
「ローレンツさん」
「騒ぎを聞いたが、食中毒らしいな」
「まだそうと決まったわけではありませんが…」
ローレンツさんが医師を連れて来てくれたおかげで直ぐに調べることができた。
「これはサバです」
「やっぱり」
「サバを生で使うなんて何を考えているんだ」
だけど、サバの魚を使っただけならばまだいい。
問題はそのサバの鮮度が悪く、商品にする事を禁じられている物だと解った。
「サバは食あたりしやすいから衛生管理には注意するように言われているが、中には安いからと言って飲食店に出す事もある」
「だが、干してから調理するが…」
「そうなると触感が最悪です」
徹底した衛生管理もなく提供すれば食中毒を起こす。
「特に子供に老人が食べて放置したら大変な事になるわ」
「ああ、俺達の店ではサバは新鮮な物で生で使う時は殺菌効果のある調味料に十分につけて酒の肴にする」
「何所の商会のお店ですか」
怒りを覚える。
王都にいた時ですらこんな酷い商売をする人はいなかったわ。
食中毒は下手すれば人の命を奪うのだから。
「爺さん、話せるか」
「うっ…ああ。これはオークル商会の店で買ったんだ。確かアルミナ様とかいう貴族のお嬢さんが売り出しているとか」
「えっ…」
お姉様が?
どうして…
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