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第二章
26王都
しおりを挟む当初の予定とかなりズレてしまった。
「あの…ここは」
「私の別邸ですよ」
貴族街にある大豪邸。
煌びやかではないけど、気品があって美術館のようなお邸だ。
「少し狭いけど、ここは別邸ですの」
「ええ、目立つといけませんの一番こじんまりとした邸にしました」
「グレーテル、ジークヴァルト様は王族でありながらも資産家だ。ご自身で事業を幾つもされている」
だからって王都でこんな豪邸で過ごせと?
「大丈夫ですよ義姉上、貴族よりも商人の方が裕福ですから」
「正確に言えば家柄だけので能無しが多いのですわ」
うん、元実家の事だな。
借金は膨れ上がるも優雅な暮らしを手放せなかったし。
「私はこれから商人として過ごす予定なんですが」
「勿論、ギルド長に頼んで偽のギルド証明を作らせました。今回の事を話しましたら快く協力してくれましたよ」
通常ギルドは貴族でも介入できない。
なのに協力してくれたのは、今回の事件に胸を痛めているからなのかもしれない。
「助かります」
「いいえ、本来貴族が民に手を出す等許されません。何よりも食の祭典を汚したのですから」
「食の祭典は初代国王陛下が民の為にと催された行事ですのよ。先王陛下の代で平民にも楽しめるようにと広間を解放したり、色々工夫をなさいましたの…それを」
アゼリアにとっても他人事がないようだった。
「食の祭典は私の姉夫婦も思い出のある行事なんだよ。だからこそ許せない」
そうか。
アゼリアがここまで怒るのは、両親との思い出を汚されたからなんだ。
「なんとしても懲らしめてやらないといけませんね」
「ああ」
渋々であるがルシウス様も許可をしてもらえたのは食の祭典とはそれ程大事な行事だからだ。
「本来なら身分問わず楽しめたお祭りだったのに」
「悲観する事はありませんわ。食の祭典は台無しになりましたが…その大事な祭典で不正を行い、暴力事件を起こした事を公にすれば公開処刑にできますわ」
「あっ…アゼリア」
「そうだね」
私は正当な方法でこらしめるつもりだったけど。二人は何をする気なのだろうか?
「大丈夫ですよ。ちゃんと骨は拾います」
「骨!」
「これ以上聞くな。聞く必要はない」
ルシウス様に肩を叩かれ、ヨーゼフ様は遠い目をしているので私は何も聞く事は出来なかった。
とにかく今は作戦を実行するべく準備をしなくてはと意気込む中。
私が知らない所で――。
「食中毒だと」
「どうして…ありえないわ!」
王都内で更なるアクシデントが起きていたのだった。
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