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第二章
19涙の決意
しおりを挟む傷だらけのポンチョを見舞いに行くと寝たきりで全身包帯だった。
「ポンチョ…ポンチョ!」
私は自分の目を疑った。
痛々しい程の傷にあんなにも元気だったポンチョが…
「私の所為で…私が王都に行ってなんて言った所為で。私が…」
「グレーテル…それは違う」
泣きじゃくる私の肩を掴むルシウス様に言われても私は納得できなかった。
「私が浅はかだったのよ。貴族の恨みを買うなんて思わなかった」
私は沢山の人にローレンツさんが作ったウィンナーを好きになって欲しかった。
何よりこのウィンナー制作命を懸けていたか。
「ローレンツさん、申し訳ありません」
「止めてくれ嬢ちゃん。アンタは何か悪い事をしたのか?俺達黒猫一派の為にどれだけ尽くしてくれたか」
「姫さんが詫びる理由はねぇ。王都に行くのを決めたのはポンチョだ」
「皆さん…」
誰一人として、私を責めない。
それが悲しい。
責めてくれた方が楽だと思う私は馬鹿だ。
「泣くよりやることがある」
「グレーテル、何かを考えているんだ」
「ポンチョを傷つけた人を野放しに出来ない」
もしここで目をつぶればどうなるか。
他にも犠牲者が出るのは確実だし、ギルドの秩序を守る裏ギルドの組織だって同じはず。
「ルシウス様、私を王都に連れて行ってください」
「グレーテル!危険だ」
「王都にカチコミ行きます。奇襲です!出入りです!」
「待て待て!何する気だ」
そうよ。
常日頃からアゼリアに教わっていたじゃない?
女同士の戦いは感情を表に出した方が負け。
武器は笑顔。
より有利に立つ事が勝敗を決める。
「私、戦います」
ポンチョの敵を取る。
「良く言ったわグレーテルちゃん」
「それでこそシャトワール家の女よ!」
「何でいるんですか!」
視察で領地を出ているはずの二人がどうして?
「何所の誰か知らないけど。地獄へ招待しなくてはね?」
「そうですわね?お母様…私も全力で潰しますわ」
笑顔なのに笑っていないママンとダリア様。
「一番厄介な二人に見つかった…王都が燃える」
「嫌ですわ。ルシウス…そんなはずないでしょう?」
「少し花火を打ち上げるだけでけよ?そう、罪人を花火に打ち上げて散す程度」
それって、かなり危ないんじゃないかしら?
空に打ち上げて散すって意味だよね?
「二人共立場を弁えてください…お願いですから。胃が…胃が痛い」
腹部を押さえながら真っ青な表情になるルシウス様だったが。
「私も協力しますわよ」
「カルタ夫人!」
思わぬ所で協力者を得ることになった。
王都の社交界の裏側まで詳しいカルタ夫人が調査を進めてくれることとなった。
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