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第二章
10転落の始り~ハワードside②
しおりを挟むこれまでのような浪費は控えて貰わなくてはならい。
馬車も新しくする予算はない。
両親に勘当された際に必要最低限の物だと言って我が家の馬車と金を渡してくれた。
後は領地の一部を生存遺産という名目だったがその土地を使ってオクレール伯爵が事業をする為に使うもあっけなく失敗して負債を抱えることになった。
それだけじゃない。
これまでは気づかなかったがオクレール伯爵家の夫妻は相当な物だった。
「使用人を増やしたいけのだけど、もう少し稼げないのかしら?」
「商人から金を借りてこい。君ならできるだろう」
「そうよ、使用人ももっと麗しいのにしないと。新居だって必要だわ」
新居だなんてとんでもない。
それに以前ならばまだしも、私がアルミナと婚約してから懇意にしてくれていた商人から距離を置かれ同僚にも冷たい目を向けられるようになった。
特に明らかだと思う程敵意を持たれたのは下級貴族のは百姓貴族出身の令嬢だった。
所詮はアルミナの美貌に嫉妬したと思っていたが、グレーテルと懇意な関係だったと後から教えられた。
他にも私に懇意に接してくれていた下町の商売人は私ではなくグレーテルに親切にされから私にも好意的だったと言われた。
何より、一番信じられなかったのは。
オクレール伯爵家は困窮しているので、使用人を大勢雇えないから住み込みの使用人は平民の二名。
重労働はほとんどグレーテルに押し付けていたから、グレーテルの抜けた穴を埋めるのは難しく邸の手入れはできない。
何よりアルミナに金を使い過ぎてグレーテルは使用人以下の待遇だった。
部屋は屋根裏部屋で食事は貧相だった。
病気の治療費として最初は払っていたが、医師が出入りしているのを見た事がない。
何より本当にアルミナは病気なのかと疑いを持っている。
搾取される日々が続く中。
こんな生活は続けられない。
だから生活費を減らそうと考えたのだが。
「生活費を減らす?何を言っているの?」
「移動辞令で、部署が変わった。出世は難しいが細々としてなら生活は出来る」
「なっ…出世すると言っておきながら何を言っているの?アルミナを…いいえ、私達を騙したの!」
夕食の時に正直に事情を話したが、彼等は私を責める言葉ばかりだった。
「騙してはいません。アルミナ、君が以前ある令嬢に暴言を吐いただろう?足の悪い令嬢だ」
「ああ、片足が不自由で目つきの悪い」
「それが何だと言うの?醜い令嬢が社交界に出入りするのがいけないのよ」
「私は親切で言ってあげたのよ」
ダメだ。
彼等に言葉が通じない。
「その令嬢が元騎士で王家直属の騎士の家柄なのです」
「だから?」
「ですから…その令嬢を侮辱した事で私の元上司が大変お怒りで」
「その程度で左遷されるなんてハワードがしっかりしてないからじゃない。私を守れないんて」
「そうだ。アルミナに詫びろ。貴様がどうしてもというから嫁にやったんだ。本来なら伯爵如きのお前に嫁がせるはずではなかった…多少は金があるから妥協したんだ」
彼等は良心はないのか。
己の欲望ばかりしかないのか。
同時に私は思い違いをしていた事に気づく。
だがもう逃げられない。
後悔しても遅かった。
そんな矢先の事だった。
「どうしてグレーテルが…」
「王族の親族ハミルトン家の養女だと!」
私が捨てたものは。
黄金の欠片だったのだった。
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