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第二章
9転落の始り~ハワードside①
しおりを挟む家族から縁を切られた後、オクレール伯爵家に迎えられたのは良かった。
だが生活は最悪以外の何物でもなかった。
まず初めに出世が約束されていたはずなのに長官より。
「ハワード・オクレール。移動辞令だ」
「は?」
「君には官僚補佐よりももっと相応しい席がある。秘書官補佐の雑用係だ」
「長官!」
渡された書類に書かれた部署は最悪だった
秘書官の一番の下っ端で雑務をこなすだけで、左遷をされたも同然だ。
しかも文官秘書の補佐を務めた者が行くような場所ではない。
「君も解っていると思うが文官とは、王宮内の規律を守り、時には不正がないか正す役目も担っている。文官は官僚の中でも清く正しい振る舞いを求められる」
「存じております」
「そんな部署に、君のような者をおいておくわけにはいかない。君の婚約者がここ最近で王都で愚かな振る舞いをしているようだが」
「お待ちください、彼女は悪気があるわけではなく」
「悪気がない?ならば、君は悪気が無ければ人を殺しても良いのか」
「そのような!」
「実際君の婚約者の所為で数名の人間が死にかけたんだ!」
普段声を荒げることがない長官が声を荒げた。
「君の婚約者が足の不自由な令嬢にぶつかった所為で、その令嬢は頭をぶつけて怪我をした」
「え?」
「しかも君の彼女は道端で邪魔だ。見苦しい恰好で来るなとまで暴言を吐いたそうだ。足の不自由な令嬢は元騎士だ。国の為に負傷したのだぞ!」
「申し訳ありません」
「おかげで殿下はお怒りだ。聞けば君の婚約者と聞かされ私がどれだけの思いをしたか解るか?いや、私のは恥だけではない!」
普段から氷の長官と呼ばれる方であるが。
王族への忠誠心は強く不正を許さない方でもあるのでアルミナの行動は許されるものではなかった。
「引継ぎは心配しなくていい。ハービーで事足りる」
「待ってください。彼は平民で」
「だから?」
「えっ…」
彼は平民で私よりも劣っているはずだ。
なのに引継ぎは問題ないってどういう事だ!
「君の代わりなど腐るほどいる」
「そんな!」
まるで必要ないなんて言われているようだった。
出世が約束されていたのに。
「ただいま」
「ハワード、今度新しい靴が欲しいのだけど。馬車も新しくしたいわ」
「アルミナ…」
「出世するんだからいいわよね?」
帰って来るなり、アルミナはまたあれが欲しい、これが欲しいばかりだ。
「何だそんな辛気臭い顔は」
「そうよ。折角アルミナが出迎えて上げているのに…そうだわ。生活費なのだけどもう少しどうにかならないかしら?」
「そうだ。アルミナの為にもう少し」
左遷される前からアルミナだけでなく義両親は浪費が酷かった。
両親と縁を切って私が養子に迎えられてからも金を無心される日々は変わらずだった。
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