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第二章
3優しい夫人~ルイーズside
しおりを挟むまだグレーテルさんが我が家へきてすぐの頃。
ポートナム夫人から頻繁に敵が身が届き、処分するのに悩んでいた使用人から手紙を受け取った。
差出人は私だった。
もう一通はグレーテルさん宛てだったのだけど。
「どういうことです母上」
「ポートナム夫人は聡明で良識のある方よ。社交界の評判も悪くないわ」
「ですが!」
「婚約に関しては彼女があずかり知らぬところで勝手に取り決め、社交界でベラベラと喋った馬鹿な姉と使用人の所為でどうにもできなかったのよ」
オクレール伯爵家とポートナム伯爵家は共に歴史が長いわけででもない。
少しだけポートナム伯爵家が上なだけ。
資産家というわけではないし。
一度流れた噂を消すなんて難しい事だった。
気の毒にポートナム夫人は受け入れる以外選択権はなかったようだわ。
手紙を読むのを悩んでいた私だったけど。
「手紙の内容にはグレーテルさんを心配する事や、内密に慰謝料を支払いたいと書かれていたわ。それから彼女が社交界に出ていない事、好きな事や好きな食べ物等…」
「そんな…」
「カルタ夫人は決して酷い方じゃないわ。グレーテルさんに多くの知識を与えたのはあの方のようよ。グレーテルさんに一度聞いた事があるの」
「聞いた?」
「元婚約者と婚約者の家族の事は好きかと」
「母上!」
無神経な事をしたと言う自覚はあるけど、どうしても聞かずにはいられなかった。
「グレーテルさんは迷わずポートナム夫妻を好きだと言ったわ…でも」
「元婚約者はどうなんです」
「自分は嫌われていると…苦笑しながら言ったわ」
美しくない。
着飾る事を怠り貴族令嬢として何もできていないと言った元婚約者は何処まで馬鹿なのか。
貴族令嬢は着飾るのが仕事でも言いたいのかしら?
ある程度身なりに気をつけるのは大切だけど、美しさとはは振る舞いで変わるのだから。
「カルタ夫人に申し訳ないと言っていたわ。ポートナム伯爵にも」
「元婚約者には未練はないと」
今さら何の心配をしているのかしら。
「当然でしょう…グレーテルさんにとってはカルタ夫人が母親なのでしょうね」
血は繋がらなくとも、実の母親から与えられなかった愛情を得た。
恩も感じている。
だけど、私達に悪いと思っているのでしょう。
「ルシウス、せめてこの程度の我儘ぐらい聞いてあげなさい。彼女の晴れ姿をお二人に」
「そういう事なら…」
あの馬鹿息子は不愉快だけど、カルタ夫人は良い方だわ。
女主人として家を守る覚悟と、慈善活動も行い、良識のある貴族の奥様だもの。
手を組むのも良いと思っている。
だけどオクレール家は許さないわ。
ただ、どうしても気になるのは。
何故こうもグレーテルさんを毛嫌いするのか。
そしてもう一つ。
グレーテルさんはあの親子と全く似ていない。
親子ならもう少し似通うはず。
逆に亡くなられたグレース夫人の方がよっぽど似ていると思ったぐらいだわ。
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