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第一章
36優しい人
しおりを挟む私は現在養子縁組をする予定だった。
実家とは縁を切っている状況なので、婚姻する時にはシャトワール家の分家筋に養子縁組をする予定だった。
「養子縁組をするならば、できるだけしっかりした家が良い」
「いや、だからと言ってだな」
ヨーゼフ様曰く。
私がハミルトン家の養女になる事で肩書を作れば今後は安全だとの事だが。
「待てヨーゼフ、いくら何でも無理があるだろ」
「大丈夫だ。父は既に他界しているし、私はしばらく独身を楽しむ予定だ」
「そうではなくてだな!君の家は大貴族で大叔母君は…」
ハミルトン家は大貴族で、隣国の帝国とも繋がりがあるらしい。
私はまだ勉強中で詳しくないのだけど、二つの国と渡りがある貴族は少ないらしい。
特にハミルトン家は大貴族で名家中の名家らしい。
「侯爵夫人となるなら必要だ」
「だが、万一のことがある。君の仕事に影響が…それに後に公爵夫人となるアゼリアも」
「いいや、これはアゼリアが言い出した事だ。これは私の我儘だ…迷惑でなければ」
お嬢様の我儘じゃない。
きっと私を心配しての事だろう。
「どうするグレーテル」
「ルシウス様」
「強制はできない。だが、君がハミルトン家に養女に行けば、彼女が王室に入っても合う事は出来る。だが同時にリスクもある」
ルシウスの様の表情は厳しい物だった。
「王室の親族になる事で君に危険が及ぶ。今までのようにいかないだろう。私も母も守る事が出来なくなる。社交界にも頻繁に出なくてはならない…その覚悟はあるか」
今までは領地から出る事もなかった。
ダリア様が守ってくださっていたから私は穏やかな暮らしをしていた。
「私がハミルトン家に養女に入る事で迷惑になりませんか」
「リスクはある。だがその程度で我が家は揺るがない。リスク以上にメリットも多いし、打算的な物もあるんだよ」
「ルシウス様にお任せします」
きっと私個人の気持ちではダメだ。
ルシウス様は私に考えるように言ってくれたのは私を信じてくれたと同時に、自分で判断するように言ったんだろう。
「私は旦那様に従います」
「グレーテル」
「私を信じてくださりありがとうございます。だからこそです」
旦那様となるルシウス様を信じたい。
貴族社会の事はまだわからないけど、シャトワール家に不利になる事だけはしてはならない。
「シャトワール家を守るための判断をお願いします」
「解った」
私の手を握り、ルシウス様はヨーゼフ様を見つめた。
「養子縁組、頼んだよ」
「ルシウス!」
「我が家にとってもありがたい申し出だ。まぁ気苦労が増えるだろうが、協力者が増えるのはありがたい」
「ありがとう…本当に」
ルシウス様は家の為と言いながらも私の願いと、ヨーゼフ様の願いを叶えてくれた。
本当に優しい人だ。
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