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第一章
35妙案~ヨーゼフside
しおりを挟む私があの子の後見人に望むのは一つだった。
アゼリアを誰よりも理解し共に苦しみ悩んでくれる人だ。
「叔父様」
「何だい」
「私は王家に入ったらもうグレーテル様は…」
「寂しいのか」
「別に」
口に出す事ができないアゼリア。
寂しいのだな。
まだアゼリアは10歳だ。
甘えたい年頃なのに、素直に甘えることもできず。
婚約だって不安なのに、周りはアゼリアを大人として接した。
誰にも弱みを見せず。友を作る事も。
年相応に笑う事も出来なかったアゼリアが不憫で仕方ない。
私が不甲斐ないばかりに。
「私がいなくなったらグレーテル様が他の令嬢に苛められると思っただけよ!」
「そうか…確かに」
実際陰口や陰湿な嫌がらせはあるが、先日もガーデンパーティーをした。
だがグレーテル嬢はそんじょそこらの令嬢とは違う。
しかも嫌味を言われても気づかない。
そして、自覚なしに彼女達に打撃を与えると言う強者だ。
しかし今までは伯爵令嬢以下だった。
今後高位貴族令嬢が相手となると危険だった。
「確かに彼女はこれまでの環境故に、淑女教育ができていないと聞いている」
「これまでの環境?」
「私も聞いた話だが、彼女は家族から冷遇されていたそうでね」
私もこっそり調べたのだ。
ルシウスやダリア様を疑うわけではない。
だがオクレール伯爵家に対して疑念を抱いている。
なんせ現当主は前当主であったグレース夫人から財産を乗っ取ったようなものだ。
故に悪い噂も多い。
そして何よりオクレール伯爵夫妻の噂は。
「姉君が病弱故に、妹であるグレーテル殿は酷い仕打ちを受けていたらしいのだよ。病気になったのはグレーテル殿が姉君の魂を吸い取ったとか」
「何よそれ。馬鹿じゃないの…そんなわけないでしょうに」
「ああ馬鹿げている」
だが溺愛する姉は病弱で妹は医者いらずの健康的な体では姉の方に同情する気持ちは解らなくはない。
だが、病弱な令嬢では跡継ぎを産めない。
それどころかこの先どうなるか。
グレーテル殿を手放すなんて馬鹿げているではないか?
「私、ずっと違和感を感じていたの」
「何だい?」
「グレーテル様は学力はあるわ。頭だって悪くない…基礎を教えれば準応力も高いし、普通は数年かかるスキルも数か月でちゃんと取得している」
淑女教育が足りないのでアゼリアがグレーテル殿の先生になっていたが、彼女は呑み込みが早かった。
「それに、立ち振る舞いはそこまで悪くないわ」
「確かにな」
磨けば淑女になるだろう。
「グレーテル様の実家はどうなっているの」
「既に縁を切っている」
「だったらハミルトン家の養子縁組にすればいいじゃない」
「え…」
アゼリアの言葉に私はハッとする。
その手があったとは!
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