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第一章
34複雑な家系
しおりを挟むあの一件からお嬢様は笑顔が戻り明るくなった。
表向きはあまり変わらないようではあるけど、偏食家だったお嬢様は前よりも食事をするようになった。
ただし食事は冷めた物ではなく出来立ての物。
毒味をした後もできるだけ冷めないように目の前で調理するように工夫をしたとか。
「本当にありがとうございます」
「いいえ、私は…」
「貴女のおかげでアゼリアは前よりも明るくなった。これもすべて貴女のおかげだ。今は伯爵家の仕事に姉の意思を継いで、慈善活動を行う様になっている」
「それはいいな」
頻繁に私に会いに来ては近況報告にいらしてお嬢様の事を聞かされていた。
「結局ジークヴァルト様との婚約はどうなったんだ」
「受けることになったんだ」
「そうか」
まだ10歳のお嬢様だけど王族の婚姻は早い。
寂しいだろうな。
「一年後お嬢様には会えなくなるんですね」
「「は?」」
「王室に入ったらもう得なくなるのかもしれませんし…ハァー」
雲の上の存在になるお嬢様とは遠くから見つめるだけになってしまう。
「ルシウス、グレーテルは」
「すなまい、貴族社会の事は勉強中なんだ」
里帰りはヨーゼフ様と過ごすだろうからし、家族の団欒を奪うのは無粋よね。
「グレーテル嬢…いや、グレーテル」
「はい?」
「君さえよければこれからも我が家に遊びに来て欲しい。いや、アゼリアが結婚しても君にはあの子の良き理解者でいて欲しいと思っている」
「ありがとうございます」
ヨーゼフ様は私を慰める為になんて優しいのか。
「いや、慰めとかではないぞ」
「はい?」
「グレーテル、ヨーゼフは君にアゼリアの後見にとなって欲しいと言っているんだ」
「えーっと」
後見人とはどういう事だろうか?
「アゼリアには私以外に身内はいない。私は養女に迎えたが、独身で男の私では及ばない所が多い」
「あの…そうは申されましても」
普通の貴族の奥様なら解るけど。
私は貴族令嬢であるけど、礼儀作法もまるでないし教養もない。
「あの…他に適任者が」
「いいえ、他の者ではダメなんだ。アゼリアは王家の親族だ。故に」
「は?」
アゼリアお嬢様が王族の親族?
「えっと…イマイチ解らなくて」
お嬢様の父方はプリンシア子爵だというのは聞いていたけど。
「先王が私の伯父に当たる」
「え!」
ヨーゼフ様の伯父様が先王陛下?
でもヨーゼフ様は伯爵様で、それでお嬢様が。
「頭が回ります」
「簡単に言えば私の伯父の妻、ローゼライン様は第一王女だったが降嫁されたが、王位継承権を狙って王太子殿下が病に亡くなられた事により、王位を継げる方がいなくなった」
「立太子できる条件を持つ王族がいない。故に夫である先王陛下が王となった」
なんてややこしい事なの!
複雑すぎるわ。
でもそうなるとアゼリアお嬢様は王家に嫁ぐのに納得だわ。
「納得しているところ悪いが、これはとんでもない事なんだよグレーテル」
「はい?」
頭を抱えるルシウス様は私が恐ろしい立場にいるのだと説明してくださった。
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