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第一章
31あの日の恋
しおりを挟む初めてグレーテルを見た時天使だと思った。
当時の私は社交界にも嫌気がさし、人間不信になっていた。
我がシャトワール家は資産家として成功を収めた為に、疎まれ妬まれるようになった。
私達の家族は決して恵まれていたから成功したんじゃない。
その裏で並みならない苦労をして来たんだ。
何度も友人に騙され、最後は心を無くしかけた祖父。
姉は子供が出来にくい体になってしまったし、母は社交界で口さがなく言われてしまった。
未亡人となってどれだけ辛い思いをしたか。
財産目当てで母に近づく汚い男を何度も目にした。
再婚を迫られても母は父を誰よりも愛していた。
だからこの先再婚はしないと決めていたがその所為で私に重い荷を負わせることを詫びた。
誰も悪くない。
なのに祖母が亡くなり、父が亡くなり、祖父が心の病気になって姉も…。
数珠繋ぎのように不幸が続き嘲笑う貴族達。
私との婚約を望む傍らで、私が侯爵の爵位を引き継いだ後に母と姉を追い出そうと考えていた。
魂胆が丸見えだった。
大人になってからも傷つけられ続けた中で、思い出の中だけに残る優しい思い出。
あの笑顔だけが心の支えだった。
優しい少女との思い出。
祖父の作るパンを幸せそうに食べる彼女はどうしているだろうか。
きっと良い人と結婚しているだろうか。
そう思っていた矢先。
何時までも婚約しない私にある方から婚姻を進められた。
表向きの妻でも良いからと金銭的に厳しい名ばかりの貴族を選んだ。
相手は最悪だった。
だが一番がめつい令嬢がいたが、妥協した。
だがその令嬢は病弱と言いながらないと思った。
アルミナ・オクレール。
伯爵令嬢ではあるが、貴族令嬢としての嗜み以前に人としてない。
病弱故に周りは同情しているが、病気も偽りだ。
隠れて煙草を吸っているのを見て、こっそり調べさせたが。
病院は昼間から酒を飲み肉料理を食べるか?
体が弱いと言いながらもヒールの高い靴を履き、ドレスに関しても。
少し母が咎めたら泣いて被害妄想をする。
冗談ではない。
これならば一回りもも上の未亡人と再婚する方マシだ。
婚約したら極力関わらないようにしよう。
最悪の場合養子縁組をするしかない。
あの女との間に子供なんて作りたくない。
むしろ会話もしたくない。
元から私は社交的な人間ではないが妻を迎えたら愛人を持たずに大切にするつもりだったが。
家族を傷つけるならば…。
そんな矢先にあの思い出の少女と再会をする事になった。
それがグレーテルだった。
伯爵令嬢としてはありえない装いに、母の言葉によれば召使のような扱いを受けたと聞く。
辛い日々を送りながらも彼女は何一つ変わっていなかった。
まったく心が汚れていなかった。
この十年、どんな思いだったのだろうか。
けれど彼女は持ち前の明るさで裏ギルド達と打ち解け、何気ない発言で領地の抱える問題を解決した。
そして今も。
「ルシウス様!これより作戦会議です」
「いや、まだ病上がり!」
「プリンを食べて治りました!アゼリアお嬢様をお助けするんです!」
長年悩み続けた親友の姪を救う為に奮闘している。
誰かに頼まれたわけじゃない、アゼリアがする必要もない。
なのに彼女は誰かの為に一生懸命だ。
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