身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

文字の大きさ
上 下
28 / 91
第一章

27片手だけ繋いで

しおりを挟む



スコーンを半分にして食べながらお嬢様は寂しそうに言う。


「人間って寂しいわね」

「え?」


子供らしかぬ大人びた表情だった。


「他人を踏みつけてのし上がっても籠の鳥の中で威張っているだけ」

「籠の鳥?」

「そうよ、貴族の奥様なんて狭い鳥籠にいるようなもの。私も鳥籠に入るの」


遅かれ早かれ貴族令嬢は社交界デビューをした後に結婚するのが普通だ。
私の年齢ならば結婚していてもおかしくない。

でもお嬢様は早すぎる。


「来年、私は王室に嫁ぐの。顔も見た事がない人に」

「お嬢様」

「でも仕方ない事よ。だけど…」


我儘を言って気丈に振舞っていても怖いのは当たり前だ。

「お嬢様立派です」

「何よ、いきなり」

「逃げ出したい。結婚したくないなんて言われないのですから」


「馬鹿じゃないの!そんなことを許されるはず…」

もしかしたら我儘を言って周りを困らせていたのは。
抵抗できないとわかっていながらサインを出していたのかもしれない。


「怖くて当然じゃないですか?貴族の常識は私にはありません。ずっとそいう環境にいました。でもお嬢様は私よりもずっと物わかりの良い方で」


「違う…私は」


「とっても良い子です」

「私はそんなんじゃない!でも…」


歯を食いしばるお嬢様を見て私は少しだけお所様の心の中を見た。


「私は尊敬しますよ。必死で背筋を伸ばしているお嬢様を」


「馬鹿じゃないの貴女」

「はい、私は頭が悪いです。そして社交界には友達も一人もいません。ですから私とお友達になってください」

「社交界は騙し合いと踏みつけあいよ!」


きっとお嬢様はこれまで傷ついて来たのかもしれない。
貴族社会の厳しさを私は知らなかった。


それはママンにダリア様やルシウス様達が知らない場所で守ってくれていたから。


貴族の生活はとても窮屈で息ができない程辛いのかもしれない。

でも、一人じゃなければ耐えられる気がする。


「お嬢様、私に教えてください。貴族社会の事を。私はまだ何も知らないのです」

「貴女なんて社交界に出たら餌食にされるわ。まぁいいわ…教えてあげてもあげるわ」


「お願いします」



私はこの日、初めてお友達ができた。


気が強くて優しくて、本当は素直な素敵なお嬢様。


だけど、お嬢様の婚約者って誰なのかしら?
きっと高位な方なのだろうとしか思えっていなかった。



後のその方に合う日が来るなんてその時は思いもよらなかったのだ。



しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています

今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。 それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。 そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。 当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。 一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

義妹が私に毒を盛ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました

新野乃花(大舟)
恋愛
義姉であるラナーと義妹であるレベッカは、ラナーの婚約者であるロッドを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるレベッカが一方的にラナーの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ラナーの事が気に入らないレベッカは、ラナーに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。

処理中です...