身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

25親友の婚約者~ヨーゼフside

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去って行く二人を見て私は唖然とした。


人間不信のアゼリアが、今日あってすぐの人から花束を受け取った。
この事実だけで衝撃的だった。



「ちょっと、貴女そんな事も知らないの?」

「えっ…えっと」

「貴女、大人の癖に」


離れた場所で初対面の女性にちゃんと会話をしている。



「どうしたヨーゼフ」

「ああ、あの人見知りのアゼリアが普通に会話をしてコミュニケーションを取っている。ありがとう友よ」


「いや、あれは…」


言葉がツンツンしているが、アゼリアは自分から会話をするなんてまずないんだ。


「あれは会話になっているのか」


「アゼリア的には」


あの子は初対面の人間と会話なんてまずしない。
ましてや贈り物を受け取るなんてことはないのだが、選んだ花がピンクのツツジだったのが最高の選択だ。


「ツツジは姉の…アゼリアの母が一番好きな花だった」

「え?」

「アゼリアにとってどんな豪華な花よりもツツジが一番うれしいはずだ。だが、ツツジは決して華やかな花ではないだろ?」

「確かに」


以前部屋にツツジを飾ろうとしたが、侍女が貴族の邸に相応しくないと言っていた。
同年代の令嬢も貧乏くさいだとか品がないというものだからアゼリアはツツジを飾らなくなってしまった。


本当は大好きな花なのに。


「姉さんは赤いアザレア、義兄は白いアザレアを好んでいて。二人の色を混ぜてピンクだ」

「そうか」


無意識なのか、それとももしやアゼリアの名前の意味を知っていたのだろうか。


「ダリア様に婚約者殿の話を聞いていて、もしやと思ったんだ」

「そうか」


ダリア様の人を見る目は確かだ。
アゼリアには理解者が必要だが、社交界の令嬢では閉ざされたあの子の心は開けない。


そんな折にお茶会でグレーテル殿の噂を聞いたんだ。
気難しい裏ギルドのリーダーまでも膝をつかせたと聞いた。

何の権力を使わずに。
彼女には人を惹きつける何かを持っていると聞いたが。



「もしや彼女ならばアゼリアも心を開いてくれるのではないかと思ってね」


私はどんなことがあってもあの子の味方だが、それだけではダメだ。
あの子を本当の意味で理解し支えてくれる友人がいなくては。

社交界を生きる為にも。
殻の籠ってはダメだと思いながらこれまでできる限りのことをしたが。



「もう彼女に頼るしかないんだ」

「ヨーゼフ」


社交界に不慣れであると言う事は、まだ染まっていない事だ。
それだけ純粋ならばもしかしたらと思ったのだ。


どうかあの子の心を――。



そう思ったが。



「叔父様、今から温室に行ってくるわ」

「え…」

「彼女を連れて行くから、使用人を近づけないでくださる?」


話し相手になって貰えればよいと思ったが、アゼリアが自分のテリトリーに初対面のグレーテル殿を連れて行くなんて。



一体どんな魔法を使ったんだ!




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