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第一章
23お誘い
しおりを挟むある穏やかな昼下がり。
今日は何時になく上機嫌なダリア様に、珍しく午後なのにルシウス様もお邸にいた。
テーブルには見た事がないお菓子。
パンケーキのブッセかしら?
「ちゃんとカレン先生から許可は貰ってあるから大丈夫よ」
「えっ…じゃあ」
カレン先生の許可があるなら食べても良い。
安心してお菓子を食べる私だったが、ルシウス様がお茶も飲もうとしなかった。
「姉上、何を企んでいるんですか」
「失礼ね」
「まぁ酷い事を言うのね?実は素敵話あるの」
「姉上の素敵な話とは災いを呼ぶ事が多いんですよ」
お菓子を食べながら二人は何やら言い合いをしていたけど。
「お嬢様、本日は蜂蜜のミルクティーを用意いたしました」
「いいの?」
気にするなと目で訴えるシアンに促され私は甘いミルクティーの味を噛みしめていた。
「グレーテルちゃん」
「はい」
「今度お茶会に参加してみないかしら?」
ガシャン!
「姉上!」
テーブルからカップやお皿を床に落としてしまい割れる音がする。
「ルシウス様?」
「ななっ…何を考えているんですか」
「そろそろお茶会に出ても良いかと思ったのよ」
お茶会とはお姉様が良く、邸にお友達を招いている派手なあれか!
「グレーテルちゃん。練習よりも、実践の方は良いわ」
「今このタイミングですか」
「お披露目までに少し人脈を広める必要があるわ」
貴族とは色々面倒なのね。
私がルシウス様の婚約者として紹介する前に色々やることがあるのか。
「大丈夫よ。そんな堅苦しいお茶会じゃないわ」
「何所です。一応聞いておきます」
「ネチネチしているわね?」
「今までの事も考えてです」
そんなにお茶会とは危険な宴なのだろうか。
「ハミルトン伯爵家」
「は?」
「ヨーゼフ様には姪がいたでしょう。あの方のお茶会よ」
「まさか…」
ガタガタ震えるルシウス様。
普段はあまり動じないのに珍しいな。
「実は、グレーテルちゃんの事を自慢していたんだけど。そしたら会いたいと言われてね?丁度いいからアゼリア様の話し相手にどうかと思って」
「やっぱり災いじゃないですか!」
「本当に神経質ね?大丈夫よ」
「グレーテルはまだ社交界にも出ていません。そんな場に出たら…」
「だからよ」
ようするにだ。
私はそのアゼリア様というお嬢様の話し相手になると。
「グレーテルちゃん。貴女にも友人が必要よ。アゼリア様は少し気が強くて我儘だけど良い方よ。きっと仲良くなれるわ」
「アゼリアは我儘がかなり酷いんです。悪い子こではありませんが…グレーテルには荷が重いですよ」
「グレーテルちゃんなら大丈夫よ。どうかしら」
ルシウス様は首を横に振っているが、ダリア様にお願いをされてしまった私は困り果てる。
「ハミルトン家は王侯貴族の中でも名家で特にソムリエ、パティシェの腕前は一流だからお菓子は絶品よ」
お菓子が絶品。
「ヨーゼフ様は美食家なのだけど」
「行きます!」
私の迷いは三秒で終わった。
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