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第一章
18元婚約者の選択~ハワードside
しおりを挟む嬉しい知らせができると思い、浮かれていた。
だが仕方ないだろう。
ずっと焦がれていた女性と婚約できると思ったら当然だ。
母上もきっと喜ぶはずだ。
なのに。
「見損ないましたよハワード」
「え?」
「まさかこのような馬鹿な真似をするなど…何処の世界に婚約者の姉に手を出す馬鹿がいますか。貴方は何処まで私を失望させれば気が済むのです」
「何を…」
アナとの婚約は喜ぶはずだ。
社交界に出てない、グレーテルよりも器量よし、性格良しの彼女の方がずっと。
「カルタ、やめないか」
「何を偉そうに。これまで私は何度も申し上げましたのに…貴方が」
「こうなった以上は仕方ない。アルミナ嬢でも我慢するしかない…形だけの妻にするしかない」
「待ってください!」
形だけって何だ?
アナ以外に妻を迎える気はない。
「アルミナ嬢では子を産むことは無理でしょう…病弱であれば女主人の仕事は務められますか?」
「母上が…」
「お前は馬鹿か?何時までも母親が女主人を務めては笑い物だ。それではアルミナ嬢はいる意味があるのか?子供は産めない、女主人の仕事もできない…持参金があっても」
「持参金はいただいておりません」
「「は?」」
俺は彼女を愛している。
政略結婚ではなく真実の愛の名の元で結婚するのだから必要ない。
「お前は馬鹿か?」
「だから言ったのです。好きにさせ過ぎだと」
「私は金目当てでアルミナと結婚するわけではありません」
貴族の結婚は利益の追求だ。
だが俺達は利益の為に結婚するわけではない。
「馬鹿かお前は」
「持参金とは、必要最低限のルールです。まぁ、グレーテルの時も持参金は跡継ぎではないから色々理由をつけて払う気はなかったようですが」
「持参金がないならば彼女の花嫁道具や必要な物は我が家で全て負担できると思っているのか?」
「それぐらい…」
「そんな金はない!」
ないだと?
我が家は伯爵家で大貴族だろう。
「我が家は伯爵家でも資産家ではない。先代からの借金もある…グレーテル嬢はアルミナ嬢のような浪費家ではないからまだ良い。だが」
「あんな世間知らずの令嬢が嫁いで来たら我が家は破産するわ。ドレスや宝石だって強請って来るでしょう」
「そんなことはありません!」
俺だって出世する事になっている。
給金だって増えるだろうし、上司に新居を提供してくださるし。
結婚式は豪華絢爛とは行かない。
グレーテルと上げるはずの式場を使うが、ちゃんと話せば解ってくれるはずだ。
彼女は聡明で優しい俺の聖女だ。
「貴方は何も知らなのよ。あの女を」
「母上!」
俺の愛しい人をあんな女なんて呼び方をしないでくれ。
彼女がそばにいてくれさえすれば俺は生きていける。
この時はそう思っていた。
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