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第一章
16奮闘
しおりを挟む体力に関しては誰にも負けない自信があった。
根性もあると自負していたけど、私は生まれて初めて目の前の問題に頭を悩ませる。
「まったくダメです!」
「はい…」
貴族社会とは関係なく過ごして来た私は物心つく頃から使用人としての生活は染みついていた事もあり淑女教育というものが解っていなかった。
「初めまして。カレンデュス・エチュードと申します」
「えっ…」
「本日より貴女の家庭教師として淑女教育を任されました」
任されたって誰に?
「彼女は私の幼馴染です」
「ママン!」
「これからお披露目までにしっかりとしつけるわ。良くてルイーザ」
「ええ、お願いね」
こうして私の淑女教育が始まった。
「背筋を伸ばして!歩いては行けません!」
「うっ…うう」
「滑るように歩くのです!もっと美しく足を綺麗に滑らせて!」
足がもつれる!
「大股で歩いてはなりません!」
「わぁぁぁ!」
「きゃああ!」
私は派手に前のめりにこける。
「グレーテルお嬢様!」
「すいません!」
「言葉遣いも声の出し方も最初からです」
「ううっ…」
なんて事だ。
朝一番の巻割や水汲みよりもずっと厳しい。
「さぁ美しく声を出す発声練習です」
「はい!」
「ですから大股で…いいえ!こうなったら徹底的にいたします」
カレンデュラ先生事、カレン先生はマナーの達人。
数多の貴族の令嬢を淑女に育て上げたと言われているが、本物の鬼だ。
「何ですその歩き方は!これでは貴族として生きて行けませんわよ」
「ひぃ!」
「できるまで甘いものは禁じます!」
私の密かな楽しみのおやつのチーズの燻製までも奪われる始末。
あまりの厳しさに。
「お待ちなさい!」
「ぎゃああ!追いかけて来た!」
耐え切れず私は馬に乗って逃亡するも。
「乗馬の美しい乗り方をなさいませ!」
「何でここまで来て!」
逃亡しながらもマナーを強要される始末だった。
何より私にとって地獄なのは…。
「苦しい…」
「コルセットにも慣れなくてはなりません」
これまでコルセットなんて身に着けてこなかった私にとって地獄の苦しみだった。
「さぁドレスを」
「うっぷ」
もうダメだ。
我慢できず私はその場でやってしまった。
「おぇぇぇ!」
「誰かタライを!」
私は生まれて初めて嘔吐をしてしまった。
朝食を出してしまった後は悲惨な匂いで最悪な事になった。
「ぜんぜぇー…」
「何たること。まさかここまでとは」
私は淑女教育がまるでダメダメだったのに落ち込んだのだが。
「私は間違っていましたわ」
「はい?」
「グレーテルお嬢様、コルセットは柔らかい素材にしましょう」
「いいんですか…」
何一つダメだった私にカレン先生は怒らなかった。
「もっと簡単なマナーからやり直します」
「はい」
「この私もまだまだ未熟でしたわ」
聞けばカレン先生は私が必要最低限のマナーはあると思ったらしい。
幼少期から礼儀作法の一切を教わって来なかったとは思わなかったので勉強方法を変えてくれた。
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