身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

14あの日の天使~ダリアside

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我がシャトワール家は祖父の代で財を成して王家以上の財を得た家柄だった。


今は裕福でもその昔は貧しく、領地の暮らしぶりは良い物ではなかった。
例えどんなに名家でも土地を生かして開かれた領地経営をしなくてはどの代で終わってしまう。

各領地で特産物を作り、貿易を広げなくてはならない。
祖国が貧しいのは中央だけの所為ではない。

私達のように領地持ちの貴族が貿易を活発に行わなかったからだ。


王都で贅沢三昧する宮廷貴族。
他人の足を引っ張り自分が有利に立つために噂を流したり、粗探しをして公の場で恥をかかせようとする。


そんなことに必死になり、今日を生きる為に必死な国民に寄付すらしない。
私達は特権を持っていると同時に義務もある。


国を豊かにすることは、各領地で特産物を作り領地を豊かにすることが必要だった。
軍人国家等に対抗するにはお金が必要だった。


だからこそ我が一族は苦労しながら、貿易を広げて来た。
なのに私達がどれだけ苦労したか知らずに周りは降って湧いて来たお金とでもいいたげなのか。


領地を豊かにするために祖父母がどれだけ苦労したか。
特に祖父は領地を豊かにすると同時に大切な物を失ってしまった。

だけど――




「お母様、やっぱり彼女は天使でした」


「ダリア」


祖父の壊れかけた心を救ってくれた一人の少女は、今も尚。

我が家の領地内での問題を解決してくれた。
いいえ、貴族とギルドの関係を修復する事も彼女がいれば叶うかもしれない。



「彼女には私達に持ちえない天性の才があります」

「ええ、私達では到底彼等の心を掴むことはできないわ。貴族であり商人気質故に」


裏ギルドとなった彼等はギルドを守る為に作られた組織。
貴族がギルドに手を出さないようにギルドを守る存在として編成された。


今でこそ私達に心を許してくれているが、相容れない部分がある。
根っからの貴族である私達には彼等の心の中に入る事は出来なかったが、グレーテルちゃんは違う。


「完全な貴族に染まっていない真っ白な心を持っていいるから」

「だからお祖父様はグレーテルちゃんを?」

「ええ」

お祖父様は資産家となっても騙し合いをする貴族を嫌っている。
気の合う職人やお百姓と酒を飲み交わしながら馬鹿な事を言って笑い合うのが一番好きだった。


貴族社会はお祖父様には窮屈過ぎたのだから。


「王都で父がパン作りに精を出して幸福そうにしていたわ」

懐かしむお母様。
社交界ではお金の神様と呼ばれ、商売に関しては鬼だと言われていたお祖父様。

でも本当は違う。

優しい人だった。
だからこそ心を殺して来たのだろう。


あの日お祖父様にもう一度希望を与えてくれたのは。


グレーテルちゃんの笑顔だったのだから。




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