身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

10真実

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私にとって命の恩人だった人だ。
その日も家族に邸から締め出されて空腹で悲しかった。


「お礼を言うのは私です。あの時お爺さんにパンを頂いて私は生きる希望を持ったんです」


お腹が空いて苦しくて、泣いていた私に差し出されたパンは宝石のように輝いていて。


「あのパンを食べて私は初めて幸せになりました」

あのパンをもう一度食べたい。
生きていても良いと、生きていたいと思った。

「あのパンが無かったら私は死んでました。心を無くしてました」

「グレーテルさん…」


あの日のパンの味は一生忘れない。

「その日から私はあのパンの虜で」

「その言葉をお祖父様に聞かせてあげたいわ」

「どんなに喜ぶか」

涙を浮かべるママンとダリア様。
お爺さんは今どうしているのだろうか。


「今は病気で歩く事もできないんだ」

「そんな…」

「記憶は失い、自分が誰か解らない。だけどあの時の少女の事を口にしていた…余程嬉しかったんだろう」


知らなかった。
私に優しくしてくださったお爺さんが。


「何もできないなんて…あんなにお世話になって。優しくしてもらって私は」


恩返しの一つもできない自分が情けない。


「やはり君はあの時のまま優しい」

「え?」

「当時、私は君の笑顔に優しさに救われたんだ」


私が救った?

「あの頃の私は他人が怖かった。嘘に塗れた世界を幼少期から見せられて」


社交界に出た事がない私には解らない世界だ。
私の正解は狭い物だったけど、よっぽど苦労したんだろうな。

「小さい頃から大変だったんですね」

「貴族として当然の事ですわ」


ダリア様は手厳しい方だった。
でも私は今思うと貴族の常識が欠落している気がする。


「ですが、この子の容姿、財にしか目を向けぬ愚か者が多いのも確かです」

「幼くして伯爵位を得た事も原因の一つなのです」


ルシウス様の年頃で爵位を得ているのは珍しい事らしい。
実際ハワードは王宮勤めはしているけど爵位を得るのは難しい。



「地位、権力だけ欲しがる女性にこの家で生きて行くことはできません」

「ええ。シャトワール家はそんな甘い家ではないもの」


「そう言いながら、婚約者候補を千切っては投げ、千切っては投げをしたのは誰ですか」

「は?」

千切って…って、何をしたの?
でも、私が詮索して良い領分じゃないのだから。


んん?
じゃあ噂で鬼嫁って噂はわざとだったのかな?

「見極めをしただけです。ちなみに今までで最低ランキングは貴女の姉です」

「へ?」


「あそこまでダメダメは初めてです」


誰からも愛されるお姉様がどうしてダメなのだろうか?

病弱以外は申し分のない人なのに。



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