身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

9顔合わせ

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初めて顔合わせとなった。


「ルシウス・シャトワールだ」


「グレーテルと申します」


既にオクレール家から籍を抜かれているので家名はない。


「出迎えができなくて申し訳ない。ようこそ我が家へ」

「はい…」


美しい金髪に翡翠の瞳。
ママンにそっくりな顔立ちでなんて美しい人。


「この度は姉君がご病気でかける言葉も」

「いいえ、姉をお望みになっていらしたのに申し訳ありません」

「えっ…」


少し気落ちした表情をしておられる!
やっぱりお姉様がよっぽど好きだったのね!

どうしよう。
なんて慰めたら良いのだろうか。


「失言を承知で言わせてもらいたいのだが」

「はい」

「私は貴女の姉君と婚約は望んでいない」

「は?」


これは寝耳に水だった。
最初からお姉様を望んでいたんじゃないのか?


「病弱で世間知らずな令嬢等我が家に必要ない。特に温室育ちでは生きて行けない」

「はい?」

「我が家は貿易を活発に行って財を成した家柄で今でこそ王家よりも財を成している。しかしその財産は空から降って来た物ではない」


確かにそうだ。
我が家は胡坐をかきすぎているけど、財を失うのは一瞬だ。


「重宝している職人や百姓は汗だくになって働いている。彼等を守る為に多くの外交を行う。時には昼夜問わず走り回る事もある…表は華やかであるが裏側は過酷だ」


真剣な表情でルシウス様はシャトワール家の事を詳しく話してくれた。
表向き資産家で裕福に見えるがその裏で大変な苦労をして来た。


「必要なのは美しい容姿ではない、外交ができる器と領民を守る覚悟に健康な体だ」

「えっ…」

「健康は金で買えない。そして時には慎ましやかに生活し、領民の暮らしを最優先できるか。君は全ての条件を満たしていたのが表向き理由だ」

「表向き」


もう一つ理由があるのか?


「ああ!なんて体たらくなの!」

「このヘタレ!」


背後からすごい音が響く。

スパァン!


「母上、ハリセンで叩くのは止めてくれ」

「情けない事」

「姉上…」


頭を押さえるルシウス様に二人は呆れる。


「息子はこの通り潔癖症なのです」

「へ?」

「幼少期から財産目当ての貴族や商家の娘に付きまとわれ、一時安全の為に避難していた所とある市場で一人の少女に一目ぼれしましたの」

「はぁ…」


私に何の関係があるのかしら?

「私の父であり、この子の祖父が老後の趣味でパン作りをしてましたの」

「パン?」

「当時は全く売れなかったのですが天使のおかげでパンは爆発的に売れましたの」


んん?
パンの天使?

「その天使様が美味しそうに食べる物だからお客様はパンを買ってくださったのです。それからパンは爆発的に売れて、今では我が領地の貴重な財源です」


「もうご存じかと思いますがその天使が貴方なのよグレーテルちゃん!」

ダリア様が声を上げて告げる。

「えーっと…それは」

「それがこのブリウォッシュだったのよ。ブリウォッシュだけではないわ。他のお菓子やパイも貴女が店の前で食べる姿を見て父は大喜びで」


私がお腹を空かせてパンを食べさせてくれた人が。

優しいパンのお爺さんが…


「知りませんでした」


私の恩人のあの人とこんな縁があったなんて。


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