8 / 91
第一章
7シャトワール家
しおりを挟む馬車から降りると目の前には豪華絢爛なお邸に到着した。
「お邸はモココだなんて、幻想的」
モココは建築デザイナーとして最古だと言われている。
教会の聖書でも女神像の制作をしたののモココの祖先だと言われている。
「モココをご存じだったのね。きっと娘も喜ぶわ」
「娘…」
もしやお姉様に嫌味を言っていたと言う小姑様か。
どうしよう、ママンは優しい人だったけど。
厳しい人だったら。
「お母様!お帰りになったのね!」
玄関から現れた女性は、ママンに勝るとも劣らない美女だった。
「よく来てくださったわね、グレーテルさん」
「えっ…」
「待っていましたよ」
私の手を握りな優しい笑顔を浮かべてくださった。
「さぁ中にお入りになって、男性陣はまだなのだけど」
私を邸に招いてくださったのはご息女だった。
「私はルシウスの姉のダリアです」
「グレーテルと申します」
「さぁ、お入りになって」
とっても優しそうな方だった。
ふんわりとした美しい髪が絹のように美しかった。
「本当なら、弟を迎えに行かせるはずだったのだけど。どうしても手が離せなくては母が迎えに行ったのだ」
「そうだったのですか」
「無礼をごめんなさいね」
「いいえ、あんな豪華な馬車に乗せていただいて」
「え…」
お迎えに来ていただいただけでも身に余る光栄なのに。
「優しい香り…ブリオッシュでしょうか」
「ご名答よ。我が家の大好物なの」
私も大好きなパンだ。
ただし焦げた失敗作の物しか食べた事はない。
だってブリオッシュは高級パンだもの。
「さぁ、沢山召し上がってくださいな」
「あっ…ありがとうございます」
こんなに歓迎して貰ってもいいのかしら。
食べたブリウォッシュは市場で食べたあの味と似ている。
「美味しい…」
「それは良かったわ。主人が焼いたのよ」
「ダリア様の旦那様はパン作りの名人なんですね」
お父様はお茶だって入れた事がない。
お母様も針よりも重い物を持った事がないと自慢していた。
でも、針を持った事なんてあるのかしら?
「我が家は、伯爵家だけど。その昔は食料困難だったのよ…それで主人が考えたのよ」
「素晴らしいです」
なんて立派な人なんだろうか。
貴族でありながらパン作りをして領民の為に尽くすなんて。
うちの領地とはえらい違いだ。
「元は百姓貴族で、収穫の時は本当に大変だったの。今は便利な畑の道具もあるのだけど」
「収穫時期は私も経験があります」
そう、大変なのよね。
しかも忙しい時に限って王宮に呼ばれたり、跡継ぎ以外は王宮勤めや騎士だったら手伝えない。
ちなみに私は一人でその作業をしていたけど。
刈りの時期は本当に辛かったとしみじみ思いながらもう一つのパンを食べる。
ちらりとダリア様を見るとニコニコ微笑まれてときめいてしまった。
シャトワール家の皆様は美形揃いね。
お姉様で見慣れていると思ったけど、人間離れした美しさだった。
66
お気に入りに追加
4,232
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義妹が私に毒を盛ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました
新野乃花(大舟)
恋愛
義姉であるラナーと義妹であるレベッカは、ラナーの婚約者であるロッドを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるレベッカが一方的にラナーの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ラナーの事が気に入らないレベッカは、ラナーに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる