身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

6優しい姑

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「こちらへ」


豪華な馬車に案内される私は手を引かれた。



フカフカの椅子に中は温かく、いたるところに細工がされている。

「素敵、ウェスタン式に、こちらはカリウス」

古代神話時代から伝わる異国の職人が施した物だった。


「貴女、随分と詳しいのですね」


「領内の市場に異国の商人がいて」


「そう…もしや言葉も知っていて?こちらを読めて?」

「はい、女神メルキスと黄金の林檎。愛を授けんとする者よ」


独学であったけど図書館に通いながら勉強した。
教会に通う方で先生をしている人がいて教わったのだ。


「発音もお上手です事」


褒められたのは初めて照れるな。

何だか聞いていた人よりもずっと優しそうな人だ。

「奥様、袖が」

「先ほどに少しやってしまったわね」

「少しお待ちを」


私の私物にお裁縫袋がある。


「これは…」

「少々動かないようにお願いします」

お針は得意だった。
新しい服を用意てもらえないから古着のボロを繕う為に市場の古着屋のおばさんに教えてもらった。



出来栄えも完璧だと思ったが、何かすごく見られている。


もしや、貴族令嬢の癖に針仕事が得意だったのがダメだったとか?
それとも私が何かまずい事を言ってしまったとか?


「グレーテルさん」

「はっ…はい」

「貴女はオクレール伯爵家のご息女と聞いてますが、養女ですか?」

「え?」


私は養子に来たなんて聞いたことはない。
捨て子だった事もないけど、やっぱり似ていないしね。

他人からも同じ血筋かと疑われたぐらいで。

「いきなり不躾な事を申し訳ありません。他意はないのです…ただ、あの両親から生まれたにしては出来たお嬢さんだと思いましてね」

「はい?」

「そもそも私は体が弱い方を望んだつもりはないのです。それをあの方達は」


なんだか誤解が色々あるようだ。
お姉様を望んでいたんじゃないのかしら?


「我が家が望むのは健康な体の女性です。なのに病気で、何もできない方を迎えるなんて」


「姉はオクレール家の聖女でして」

「聖女?魔女の間違いでしよう…いいえ、お姉様を悪く言うべきではないわね」


申し訳なさそうにされる奥様は本当に優しい方だ。

「あの、奥様」

「貴女は私の義娘になるのです。そのような呼び方は不適切です」

「失礼しました」

「私の事はママンと呼びなさい」

「えっ…」


ママン?
私は一瞬耳を疑ったが、もしかしたら家によって異なるのかな?

シャトワール家はアットホームな環境なのかもしれない。


「はいママン」


郷にいては郷に従えと言うし、お姑様の言葉は素直に従うべきだ。


「ママン、私はどうなりますか?」

「心配はいりません。貴女はこのまま我が家に嫁いでいただきます。ご両親からはお言葉を預かっています」


何をとは聞かなかった。
ママンの気遣いなのだろうと解ったけど、本当にお姉様は何故誤解をしたのかしら。


こんなに優しくて良い方なのに厳しい事ばかり言っていたなんて。


とっても素敵な人だわ。


「そろそろ到着しますわ」

「はい…わぁ!」

窓から見える景色は絶景だった。


「素敵」

私は素敵な景色に心が躍った。


青い海に白い砂に素敵なヒマワリの花が咲いていた。


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