身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

文字の大きさ
上 下
5 / 91
第一章

4捨てられた妹

しおりを挟む





殴られ過ぎて意識を手放した私だったが使用人に水をかけられ仕事に戻された。

廊下で倒れていては邪魔だったらしい。
その日は罰として食事を抜かれ馬小屋で寝る羽目になった。


「散々な目に合ったな」


体が丈夫で助かった。
もし体が弱かったら風邪を引いていたかも知れない。


馬小屋で一晩過ごした翌日。


何時も通りに家事をする中。


「本当にお可哀想なアルミナ様」

「いくら資産家でもあんな家に嫁がされるなんて」

「旦那様もお金に目がくらんだからってね?」

「お美しいアルミナ様が気の毒だわ」


仕事をしながら朝から使用人がヒソヒソ話している。
聞けばお姉様の婚約者となった家が少し問題があるとか、使用人からも愛されてるお姉様が気の毒だと言っている。


「どうしてアルミナ様が不幸なのにあんなのが」

「そうよ、アルミナ様が病弱なのはあの疫病神の所為よ」


聞こえているんだけど。
いや、聞こえるように言っているんだけど無視しよう。

聞くだけ無駄だ。
精神が擦り減るだけだと私は学んだ。


「ちょっと無視してるんじゃないわよ」

「出来損ないのブスの癖に!」

「アンタが身代わりになれば良いのに!」


今日は何時になく私への扱いが酷いな。
朝から空気が悪く、普段ならお姉様は部屋から出て来るはずなのに。


「嫌よ!行きたくない!」


掃除をする中、お姉様の声が響く。
お母様がお姉様を部屋から出すのに説得をしている最中だった。


「部屋から出て来なさいアルミナ。とにかく先方の方と話を」

「どうしてあんな家にお嫁に行かなくちゃダメなの?私はお父様とお母様とずっと家族三人一緒にいたい」

「アルミナ…」


部屋から泣き叫ぶ声が響き、誰も悲しんでいた。
蚊帳の外は私だけだったのだけど。


「失礼します」

「ハワード様!」

そこに玄関から慌てて現れたハワードにお母様は驚く。


「ご無礼をお許しくださいオクレール夫人。アルミナ様に…僕だ。アナ!」


お姉様の部屋の前に立ち、ドアを叩くハワード。


「ハワード!」

「アルミナ!」


二人は互いを確かめ合う様に抱き合う。

「助けてハワード。私は鬼の巣窟のような邸になんて行きたくないわ!嫌よ」

「可哀想なアルミナ。たださえ体が弱い君に…」

涙を流すお姉様を優しく慰め涙を拭うハワードは痛々しそうに見つめている。


「オクレール夫人、本日はお願いがあってまいりました。アルミナ嬢を私の妻に迎える事をお許しください」

「えっ…」

「シャトワール伯爵家には劣りますが我が家も伯爵家で王家に使える名家です」


ハワードはお姉様を抱きしめたまま告げる。


「お母様、私はハワードと愛し合っているの!お願い」

「申し訳ありません。ずっとアルミナ嬢を愛していました。ですが貴族の掟として思いを閉じ込めていました。近いうちに出世する事を上司から約束されています。どうか…」

「貴方!」


二人を見てお母様はお父様を説得しようとするも。


「だが先方には何と言うんだ」


同じ伯爵とは言えど家格の違いは歴然だった。

「その心配はありません。グレーテル嬢が代わりに嫁げばよいではありませんか」

「何?」

「アルミナ嬢は体が弱く病状が悪化して嫁げなくなったと言えば問題ありません。顔合わせしかしていないのであれば問題ありません…グレーテルが望んだと言う事にすれば」

何を言ってるの?
私はポートナム家に嫁ぐ事が決まっているのに。


私は…

カルタ夫人と約束しているのに。


「そうか、致し方ない。支度金は既に使っているからな」

「この際厄介者を処分できるのだからいい考えよ。アルミナの役に立てるんだから身に余る光栄と思いなさい!」

そう言いながら私を睨みつけるお母様。

「お前の実家はもうないと思いなさい!婚約と同時に養子にという事にするわ」

「どうせ妻として扱われないだろうが…出戻って来る事は許さない。今まで育ててやった恩返しをしろ」

「病弱な姉の為に当然だろう?」


婚約者までも私の味方ではなかった。
むしろ鬼なのは彼等ではないかと思った私は悲しいと思う事もなかった。

既に彼等に愛情を抱く事はなかったのだから。


しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。 家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。 国王の政務の怠慢。 母と妹の浪費。 兄の女癖の悪さによる乱行。 王家の汚点の全てを押し付けられてきた。 そんな彼女はついに望むのだった。 「どうか死なせて」 応える者は確かにあった。 「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」 幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。 公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。 そして、3日後。 彼女は処刑された。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています

今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。 それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。 そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。 当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。 一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

処理中です...