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第一章
4捨てられた妹
しおりを挟む殴られ過ぎて意識を手放した私だったが使用人に水をかけられ仕事に戻された。
廊下で倒れていては邪魔だったらしい。
その日は罰として食事を抜かれ馬小屋で寝る羽目になった。
「散々な目に合ったな」
体が丈夫で助かった。
もし体が弱かったら風邪を引いていたかも知れない。
馬小屋で一晩過ごした翌日。
何時も通りに家事をする中。
「本当にお可哀想なアルミナ様」
「いくら資産家でもあんな家に嫁がされるなんて」
「旦那様もお金に目がくらんだからってね?」
「お美しいアルミナ様が気の毒だわ」
仕事をしながら朝から使用人がヒソヒソ話している。
聞けばお姉様の婚約者となった家が少し問題があるとか、使用人からも愛されてるお姉様が気の毒だと言っている。
「どうしてアルミナ様が不幸なのにあんなのが」
「そうよ、アルミナ様が病弱なのはあの疫病神の所為よ」
聞こえているんだけど。
いや、聞こえるように言っているんだけど無視しよう。
聞くだけ無駄だ。
精神が擦り減るだけだと私は学んだ。
「ちょっと無視してるんじゃないわよ」
「出来損ないのブスの癖に!」
「アンタが身代わりになれば良いのに!」
今日は何時になく私への扱いが酷いな。
朝から空気が悪く、普段ならお姉様は部屋から出て来るはずなのに。
「嫌よ!行きたくない!」
掃除をする中、お姉様の声が響く。
お母様がお姉様を部屋から出すのに説得をしている最中だった。
「部屋から出て来なさいアルミナ。とにかく先方の方と話を」
「どうしてあんな家にお嫁に行かなくちゃダメなの?私はお父様とお母様とずっと家族三人一緒にいたい」
「アルミナ…」
部屋から泣き叫ぶ声が響き、誰も悲しんでいた。
蚊帳の外は私だけだったのだけど。
「失礼します」
「ハワード様!」
そこに玄関から慌てて現れたハワードにお母様は驚く。
「ご無礼をお許しくださいオクレール夫人。アルミナ様に…僕だ。アナ!」
お姉様の部屋の前に立ち、ドアを叩くハワード。
「ハワード!」
「アルミナ!」
二人は互いを確かめ合う様に抱き合う。
「助けてハワード。私は鬼の巣窟のような邸になんて行きたくないわ!嫌よ」
「可哀想なアルミナ。たださえ体が弱い君に…」
涙を流すお姉様を優しく慰め涙を拭うハワードは痛々しそうに見つめている。
「オクレール夫人、本日はお願いがあってまいりました。アルミナ嬢を私の妻に迎える事をお許しください」
「えっ…」
「シャトワール伯爵家には劣りますが我が家も伯爵家で王家に使える名家です」
ハワードはお姉様を抱きしめたまま告げる。
「お母様、私はハワードと愛し合っているの!お願い」
「申し訳ありません。ずっとアルミナ嬢を愛していました。ですが貴族の掟として思いを閉じ込めていました。近いうちに出世する事を上司から約束されています。どうか…」
「貴方!」
二人を見てお母様はお父様を説得しようとするも。
「だが先方には何と言うんだ」
同じ伯爵とは言えど家格の違いは歴然だった。
「その心配はありません。グレーテル嬢が代わりに嫁げばよいではありませんか」
「何?」
「アルミナ嬢は体が弱く病状が悪化して嫁げなくなったと言えば問題ありません。顔合わせしかしていないのであれば問題ありません…グレーテルが望んだと言う事にすれば」
何を言ってるの?
私はポートナム家に嫁ぐ事が決まっているのに。
私は…
カルタ夫人と約束しているのに。
「そうか、致し方ない。支度金は既に使っているからな」
「この際厄介者を処分できるのだからいい考えよ。アルミナの役に立てるんだから身に余る光栄と思いなさい!」
そう言いながら私を睨みつけるお母様。
「お前の実家はもうないと思いなさい!婚約と同時に養子にという事にするわ」
「どうせ妻として扱われないだろうが…出戻って来る事は許さない。今まで育ててやった恩返しをしろ」
「病弱な姉の為に当然だろう?」
婚約者までも私の味方ではなかった。
むしろ鬼なのは彼等ではないかと思った私は悲しいと思う事もなかった。
既に彼等に愛情を抱く事はなかったのだから。
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