身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ

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第一章

1家族

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平民、商家、貴族。
生まれは違えど、上限関係とは同じような物だった。


特に姉妹は片方が優遇され、片方が冷遇される。


だけど、家族に愛されたから幸せで、愛されなかったら不幸とは限らない。


恵まれるとは誰が決めるのか。
綺麗な洋服を着て贅沢な暮らしをしても、幸せになれるとは限らない。

だって私は身近で見ている姉が幸せに見えなかった。


「何をやっている!呼ばれたら早く来なさい」


「はい!」


箒を持って急いで母屋に向かう。
私を呼ぶのは母だった。


「お前は本当にのろまね」

「おい貴様!そんな恰好で視界に入るな」


私をゴミのように見る人は父だった。
二人は私をおいとか、お前とか、酷い時はこんな呼ばれ方だった。


「お母様」

「ああ、アルミナ!来てはダメよ。こんなのと同じ部屋に」


我が家の宝、アルミナ。
私の姉で両親に溺愛されていいる。


「本当に何でお前なんかが生まれて来たのよ」

「アルミナが体が弱いのはお前の所為だ。お前が元気で何でアルミナが!」

「とっとと消えなさい」


体の弱い姉。
対する私は病知らずで真冬に外にいても、雨に濡れても風邪をひかない。
三日間徹夜をしてもピンピンしている程の頑丈な体だった。



対する姉は幼少期から体が弱いく儚げだった。
故に私は忌み嫌われ、娘であるが使用人以下の扱いを受けていた。



だけど私は姉を気の毒に思った。


両親からの愛情を貰い、使用人に大事にされながらも重い病気で苦労している。


「今のうちに腹ごしらえをしようっと」


かまどの掃除をしてその合間に腹ごしらえをする。
早朝にパン屋に買い物に行った時にパン屋のおじさんから少し分けて貰った。


「んぅー!最高」

最近移動販売に来ているパン屋さん。
そのパンが最高に美味しい。

どんなに辛い時も美味しい物を食べた時だけ幸せになる。
家族は一流の料理人以外が作った料理を口にする事は毛嫌いするけど、私はこんなに美味しい物を知らないなんて可哀想になる。


特に屋台で売られているパンや焼き鳥はご馳走だった。

「はぁー幸せ」

特に私が大好きなパン屋さん。

「このパンとミルクだけで生きていける」

空腹は最高のスパイスというけど、空腹じゃなくても美味しいわ。

うちの料理人よりもずっと美味しいと思うのよね。
残り物を少し食べた事があるけど、パンの味も触感が悪くざらざらしている。

その上にバターとシロップにジャムをかけている。

正直見ていて気持ち悪くなるけど、偏食が酷いお姉様は甘いものを好む。
何もつけていないパンは食べられなかった。

病人なのにいいのかと思うけど、私が口答えをしたら食事抜きだけで済まなくなる。


細やかな幸せを感じながら、日々を過ごしていた。


これが私の日常だった。
日陰の中でも自由があるならばそれなりに幸せだと思っていた。



だけど私の生活は一変したのは一年後だった。
お姉様の婚約が決まってしばらく過ぎた頃に起きたのだった。





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