婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

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89.ブラコン~ルゴニスside

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全て元通りとは行かなかったが、守りたかったものを守る事はできたのだろうか。


「ルゴニス」

「兄上」


本体ならばここに戻って来る事は許されないというの格別の配慮で俺が王族と同じ場にいる事は許されないはずだったのだが。



「お前は正式に廃嫡になっていない。お前が望むならば帰って来い」

「は?」

俺は王族席から除籍されているはずだ。
貴族籍も抜かれる予定だったはずなのに何を言っているのだろうか?


「それは表向きの事です」

「アンジェリカ嬢?」

「貴方様の言動には矛盾が生じていましたし、王子が廃嫡になるにしては罪が重すぎます。公の場でご令嬢の立場を傷つけはしましたが。相手は王族でもないのですから」

「厳しい処分を出したのは、その後お前の身を守るためだ。厳し過ぎる嫌いの処分をされたのであれば、処分が甘ければお前に危害を加える者がいる」


では俺が廃嫡なった理由は俺を守る為でもあったのか?


「例え、お前が勝手な理由で婚約破棄宣言をしたとしても、父上は償いをさせた後に王族に戻れなくともある程度の地位を与えるつもりだったはずだ。私達の父上はそんなに非常ではない」

「ですが…」

「もう良い。十分すぎるぐらいだ。帰って来てくれ…私にはお前が必要だ」

俺は兄上を追い込んでしまった。
優しい兄上を失脚させたかもしれないと言うのに。

「私はお前が妬ましかった。嫉妬していたのは事実だ…だが、お前を憎いと思った事はない。いや、心の中ではあるかもしれないが、お前に救われた部分は多かった」

「俺を許すと…」

「許すも何も、此度の一件は私にも責任がある」


俺は自分が馬鹿だった。
早くイライザの目論見に気づき、その後ろで操っていた貴族派の存在に気づかずにいた事で兄上に心労を与えてしまった。



だから――!


「俺は兄上が好きでした。いいえ、今も…兄上に王になって欲しくて。兄上を守りしたくて…でも、俺が頑張れば頑張る程兄上を追い詰めてしまって。どうしていいか解らなくなりました」


政治の事はよくわからず、今でも苦手だ。
皆は俺を優秀だと言うが、そうじゃないんだ。

本当は思慮が足りず勉強だって得意じゃない。
剣術の才能があれど、学問に関してはからっきしで一時は教師に呆れられてしまった俺に勉強を見てくれたのが兄上だった。


俺でも解るように解りやすく教えてくれて。
学ぶことを楽しんで行けばいい、勉強が嫌いなら剣術を磨いていけばいと優しい言葉をかけてくれた兄上が好きで。


「俺は今でも兄上の事が世界一好きです!」

「おい、それはどうなんだ」


離れていた時間。
距離を取っていた数年間が込み上げ俺は兄上に抱き着いた。


「殿下に抱き着かないでください!」

「少しぐらいいいじゃないか!大体俺は貴女もいけ好かない。俺が我慢しているのに兄上の周りをチョロチョロと!俺だけの兄上だったのに」

「まぁ!情けをかけてもらった身で!」

「言っておくが俺は兄上の為にしただけで、貴女の為じゃない。聡明でお優しく素晴らしい俺の兄上の為だ!」


ずっと心にため込んでいた物が溢れて止まらなかった。


それぐらいに俺は兄上が大好きなんだ!


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