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87.数多の罪
しおりを挟むジャックが握りしめている網の中には口を塞がれているローズマリーがジタバタ暴れている。
「実に意気がいいでしょう?本当にしぶといですね」
「お前は…」
ここまで来るととてつもなく哀れになる。
首から下は袋に入れられている状態で芋虫の如くだったが、何故袋?
「眼に毒ですので」
「深く追求はしない」
「賢明な判断ですよ」
知りたいようで知りたくなかった最中、俺がすべきことは一つだ。
「とりあえずあの男を拘束だ」
どうにか隙を見て逃げようとしているがそうは行かない。
「ステンシル侯爵、何処に行かれる?」
「えっ…私は!」
「そなたも重罪人ですぞ?」
母上だけでなく伯母上も参戦した。
俺が出る幕はなさそうだな。
「同情の余地はありませんが、少し哀れですわね?お義母様は拷問も行っておりますので。この後どうなるか想像できますわ」
「アイリス。大丈夫なのか」
「はい」
一度に色々聞かされ、精神的に参っていると思ったが落ち着いている。
「両親の事は確かにショックでした。ですが私の母は我が子を虐げる方ではなくて安堵していますが…私の叔母が犯罪者では…」
「心配はない。君は既にステンシル侯爵家とは縁を切っているし、叔母と姪の関係ならば大丈夫だ」
「でも…」
「ご安心ください妃殿下。我ら帝国の記者は貴女様の味方です」
「まさか、このような真実であったとは思いもよりませんでしたが、カルドア王国の公爵家の血筋を持つ方を敵に回せる者はおりません」
「そうなのですね」
安堵するアイリスの手を繋ぎながらも俺は告げる。
「例え国民に反対をされても認めてもらえるようにすればいい」
「はい、ユーリ様」
予想もしなかった真実に驚きはしたが、邪魔者を排除することができて、尚且つ同盟を強める事が叶った俺達にからすれば万々歳だった。
「ユーリ殿下」
「ハルバート女公爵」
「改めてお礼を申し上げます。息子夫婦の宝を今日までお守りくださったことを心からお礼を申し上げます。そしてお詫びを。アイリス妃」
「お祖母様…」
「そう呼んでいただけるのですか」
ハルバート女公爵はある意味で一番傷ついたのかもしれない。
最愛の息子を失い、孫までも失った絶望の中生きて来たのだから。
「許されるなら何時か、父の国に来てください。二人が愛した国を…」
「はい!」
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その後は、各国の代表の協力もあり、罪人を早々に裁くことができた。
裁判にける必要もなく、公の場で散々無礼を働いた時点でステンシル侯爵一家は没落してもおかしくなかった。
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