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79.本当の姿
しおりを挟む「汚らわしい!」
アイリスを見ながら誰かを見ている。
そんな気がしてならなかった。
「あの女と同じ目で…私を見るな!私を馬鹿にして!」
「おいお前!」
「近づかないで!どうせ貴方だって思っているんでしょ?フレリアを娶れば良かったと!私だって一時の感情でこんな男を選んでしまった事に後悔しているわ!」
「何だと!」
妻の異常さに気づいたステンシル侯爵は、落ち着かせようとするも逆効果となり、言ってはならないことを言った。
「愛情も美貌も、社交界で殿方からの人気も私の方がずっと上だった。なのに…どうしてあんな地味で冴えない姉が好かれるのよ。本ばかり読んでいるだけなのに!侯爵家に真っ先に見合い話が来て悔しかったから奪ったのよ!」
「お母様、何を…」
「なのに、その後すぐに王族から姉に見合いの話が持ち上がった。もしかしたら私が選ばれたかもしれないのに…私の婚約者は跡継ぎにもなれない凡愚だったと後から気づいた時はどれ程絶望したか」
「凡愚だと!」
夫を侮辱しながらも胸中を語る姿は病的にしか見えなかった。
「長男が都合よく死んでくれても、忌まわしいあの女は私を認めなかった。最後まで私を蔑んだ目で見ていたわ。まるで姉のように、美しく着飾る私を常に憐れみの目で見ていた…その目とアイリスは一緒だったのよ!」
「サビィーネ!お前という奴は…」
「姉の婚約者だからこそ、私はなんとかして奪って奪おうと躍起になったわ。なのに姉は私を心から祝福したわ。こんな屈辱ないわ…勝ったと思ったのに!後から両親が聞いた話では、貴方との婚約は不本意だったのだもの!」
「どういうことだ!」
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見せかけだけ。
メッキがはがれた彼等の姿は見るに堪えないだろうが、精神的に追い込まれているステンシル侯爵夫人は理解しているのだろうか。
「ステンシル侯爵夫人…はやり貴女がフレリアとワーグナーを!」
その時、静観していた一人の女性が声を上げた。
我が国のの同盟国、カルドア王国のハルバート女公爵だった。
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