婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

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57.血より濃い絆

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俺の知らない所で二人のわだかまりは合ったが、ようやく誤解が解けたのだ。

クレイル殿下は体が弱い事で心無い言葉を言われ苦しみ、ルゴニス様も自分の存在の所為で兄を苦しめている事を悩んでいた。


二人は互いを思いやるあまり、傷つけあう道を選んでしまったのだろう。


「私はお二人が羨ましゅうございます」

「アイリス…」

「ここまで思ってくださる兄君がいらっしゃるルゴニス様、ここまで慕ってくださる弟君がいらっしゃるクレイル様」


アイリスの事を思うと胸が痛くて仕方ない。
俺の家庭環境も周りからは変な眼で見られようとも良好だった。


家族中でちゃんと絆があった。


だがアイリスは?
実の母親にいないのと同じように虐げられ、姉妹からは?

頼みの父親は気づこうともしないなんて。

気づいていて放置しているなら悪いが、気づかないなんて余計質が悪い。

第三者から見てもアイリスが虐げられていると解るのに、あの男は気づかなかったのか?

気づこうともしなかった。


目を逸らし、アイリスの優しさに甘えて来たのにも気づかない。
姉と妹が贅沢三昧するツケを払っているのはアイリスであることに気づかない。



「何を言いますの?アイリスにはいるではありませんか、世界一素晴らしいお姑様が…ビアンカ様以上の方はおりませんわよ」

「エラノーラ様」

「恐れながら私も同感です」


そこで何故母上が出てくるんだ?


「私もそう思うよ。貴女がそこまでの教養を身に着けたのは誰だ?ステンシル侯爵夫人には聡明さが欠けている。貴族夫人として何が必要か、それを理解していない」

「そうですね…私の育ての母はビアンカ様です。母はあの方ですわ」



血は繋がっていないが母上はアイリスを我が子のように育てて来た。


アイリスが母上を誠の母のように思ってくれるなら、母上は喜ぶだろう。


「だがアイリス、ナージャ叔母上の事も忘れないでくれ」

「はい…」


ナージャ叔母上もアイリスの義母でもあるのだから。
あの方は聖女である以上、婚姻はできないし、子を産むことができない。


だからこそアイリスを我が子として慈しめるのだから。


「アイリス、これだけいれば十分ではなくて?貴女の家族ですわ」

「私の…」

「そうですわ。貴女は私の戦友で盟友ですわ。ユーリ様はクレイル様とは兄弟のように強い絆が御座います。ルゴニス様もローゼ様も」


「はい…」


孤独だったアイリスにはこれだけの味方がいる。


こんな心強いことなないのだが…。


「クレイル様、ある意味恐ろしい程の後ろ盾ではないでしょうか」

ふと思ったのは、アイリスの後ろ盾だ。
姑はシメリス帝国の元第二皇女で義母は帝国一の女騎士であり政治的にも口出しできる我が伯母上と帝国の聖女と来た。


挙句盟友はブリチア王国の王太子と王太子妃と来た。


「国を簡単に乗っ取れるな」

「ああ、ないと思うが」

「あの三人が怖いのですが」


三人そろえばなんとやらとあるが、恐ろしい。

恐ろし過ぎるぞ!




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