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40.第二王子の苦悩~ルゴニスside
しおりを挟む極寒の辺境地に春が訪れた。
年中寒い季節であれど、花は咲く。
凍り付いた薔薇は美しくまるで宝石のように輝いていた。
「ルゴニス様、お茶が入りました」
「ああ、ありがとうローゼ」
春の訪れと言っても極寒の地は未だに真冬のような寒さはあれど、暖を取ることはできる。
「寒いので紅茶にバターを入れたんです」
「これは美味い」
辺境地に来てどれぐらいの月日が過ぎただろうか。
公の場で侯爵令嬢との婚約破棄をした後に俺は謹慎処分を受けた後に父上に廃嫡を願った。
程なくして爵位を剥奪され、公には厳し過ぎる処置だとも言われていたが。
彼女を同情的に見る者は当然の処置だと思う者もいる。
俺を利用し甘い汁を吸いつくそうとした連中からすれば落胆しただろう。
「王都での事をお考えですか」
「いや、君には今でも申し訳ないと思っている。貴族令嬢の君を巻き込んで」
「今さらですわ」
ローゼは下級貴族出身と言えど王族派の子爵令嬢だった。
母親が平民である事で社交界では色々言われていたが、逆光に立ち向かう程の強さを持っていた。
学園で俺達は直ぐに打ち解け良き友人になった。
それから俺達は互いに夢を語り合う仲になりいずれ、身分ではなく実力主義の世を作りたいと思っていた。
だが俺達の関係は望ましくないと。
良からぬ噂が流れた。
二人きりで会うようなことはしていないし、男女の関係になるような振る舞いはしていない。
なのに彼女を排除しようとする者が噂を流した。
俺は出来るだけ距離を取りながらも彼女と交流を深めていたが、友人以上の気持ちが芽生え始めていたのは事実だ。
婚約者の彼女に罪悪感を感じ、俺は思いを封じた。
そんなある日、俺はとんでもない計画を耳にしてしまった。
兄上を失脚させようとする計画だ。
その計画を知り、何とか阻止しようと思ったが。
婚約者のイライザは直接的ではないが、王太子妃の座を狙っている事は薄々感じていたが。
兄を踏みつけにまで考えていないと思っていた。
しかし、俺が思う以上に彼女は権力に執着し、義姉上までも孤立させていた。
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悪役になり、兄上の失脚を狙う連中もろとも失脚すれば。
しかしその為には罪の片棒を被ってくれる相棒が必要になる。
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そんな俺に彼女は。
ローゼは一緒に悪人になってくれると言ってくれた。
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