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33.似た者同士
しおりを挟むアイリスは着々と自分の地位を確実にしていた。
まず初めに、帝都の守備を強化する為に辺境地の者を集わせ、もう一つの騎士団を作った。
現在近衛騎士と帝国騎士団が存在するがもう一つの組織がある。
兵団と呼ばれる者だ。
その中に兵団のすぐ下の組織を作り彼等に帝都の治安の守備を任せることにした。
他にも下級貴族の次男以下を騎士団だけでなく官僚補佐等にの採用枠を広める事を提案した。
貴族や中級階級の平民は長子以外は独立をしなくてはならないが、働き口がない者も少なくない。
そこで教養のある者は帝国の貴族院の教師に採用して、礼儀作法を教えたり。
平民にも貴族と同様の教養を与えることでシメリス帝国の教育機関がどれ程素晴らしいか他国に知らしめる案を出してくれた。
ナージャ叔母上は以前から平民の教養が乏しい事を嘆いていた。
どんなに才能があっても学ぶ場がなければ伸ばすことはできないし、適材適所があると言う声も大きい。
そして次に税に関してだ。
貧しい民だけ税を取り続ける事にずっと違和感を感じていたので、貴族にも税を取る法案を提出した。
ただしすぐには無理なので、贅沢品に税金をかけた。
そうすれば国を少し楽にできるし、誰も文句を言わないだろう。
だが、ここまでの事を考えていたとは恐ろしい。
「流石ですわアイリス!なんて聡明なのかしら」
「ありがとうございます」
「贅沢品に税金とは良く考えましたわ。これならば文句は言えませんわ。第二身分から税金を支払う案件は直ぐにとは行きませんが、一年あれば確実に追い込めますわね」
扇を広げて高笑いをする伯母上は上機嫌だった。
「それから、無駄な税金を削減すればこれ、国民の税金はこれぐらい減らせるかと」
「まぁ、ここまで計算してくださったのね。聞けば侯爵家の経理もなさっていたとか」
「はい…」
姉と妹が無駄遣いばかりするから、すっかり倹約が身についたのか。
しかしすごいな。
「後は他国からお金を出していただくのが効率化と」
「他国から?」
「はい留学生を招き入れ、シメリス帝国の技術を学ばせ、その見返りにこちらが欲する物を要求します。お金ではなく足りない物資等を」
「アイリス、そんなことまで」
なんて恐ろしいんだ。
俺が邸にいない間も、アイリスは常に多くの情報を仕入れ勉強していたのか。
「シメリス帝国には財だけでなく軍人国家としてもすぐれ、尚且つ技術も優れていれば欲するはずです。ならばこちらが有利なのように脅迫…いえ、同盟を結べば良いかと」
今、恐ろしい言葉を聞いた気がした。
「アイリス、この短期間で学んだようですわね?そうですわ!この時代女は賢く立ち回った方が勝ち!」
「はい」
「宮廷は魔の巣窟ですが、上手くやりこんだ方が生き残るのです!アイリス、貴女は誰にも負けてはなりません」
二人は握手をする。
「ユーリよ、恐ろしい同盟が結ばれた気が…胃が痛い」
「伯父上…」
ああ、お労しい伯父上。
俺のアイリスが伯母上の手によって豹変して行くのが何とも言えない気持ちになった。
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