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14.家政夫な従者
しおりを挟む疲れも溜まっていたのか、夜はゆっくり眠れた。
朝食は部屋でルームサービスをと思っていたが、普段から家政夫まがいな事をしている俺の乳兄弟が許すはずもなく。
「お待たせしました!」
「おい、ジャック」
「さぁ、朝はしっかりたべないと行けませんからね!」
何で部屋にキッチンがあるんだ。
そして何故お前はメイド服に身を包み食事の準備をしているんだ!
「ジャック…その」
「本日のクロワッサンは自信作ですよ!」
自慢気に出来立てのクロワッサンにトロトロもオムレツに色鮮やかな生野菜の皿だが盛り付けられている。
「ロビン、大丈夫か」
隣で顔色の悪いロビンを見て察した。
ジャックの行動にショックを受けているのだろうな。
「私は侍女としてプライドをズタズタにされましたわ。何故殿方が、あんなにも手際が良いのです。掃除、洗濯は完璧で…」
「ああ」
アイツは侍従であるが、家事が大好きだ。
侍従として補佐もしているが掃除や料理に洗濯をする方が好きで、俺の身の回りの世話をするうちに家事スキルが身についた。
元から器用ではあったが。
その変動か、少し男らしさが欠ける。
そして武術はまったくできない。
「ジャックは俗にいう乙男らしいんだ」
「おっとめん?」
「そうだ、家事や料理が大好きな男を言う。アイツは武術に関してはからっきしだが、家事スキルは辺境伯爵家の侍女長の上を行く」
「それは…」
気持ちは解るぞ。
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性別を間違えて生まれて来たんじゃないかと言われる程だ。
母上は他人の性癖に関しては寛大だから、別にいいと言っていたが。
他所は違う。
だから公の場では隠していたんだ。
「驚かせてすまなかった」
「いいえ、私も自分の不甲斐なさ故ですので。ですが、私も侍女として負けません、ジャックは私の好敵手ですわ」
「あっ…ああ」
受け入れてくれたのは良かったが変な方向に進まなければいいのだが。
「さぁ、奥様。お茶を」
「はい?」
「やだなぁ?お二人は結婚するんですから」
「おい…」
まだ婚約者の状態なのに何を言っているんだ。
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「いや、何で婚姻の書類を持っているんだ!それに式場のリストまで」
「ちっちっ、甘いですよユーリ様。結婚式には準備が必要ですからね?いくら貴族式じゃないとはいえ、乙女の最大のイベントです。段取りが必要ですからね」
言っている事は正論なのに何故か、ジャックがノリノリでものすごく嫌な予感がした。
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