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13.匿名希望の贈り物
しおりを挟む「何故こうなった」
夕食はルームサービスを取ろうとしたら客室乗務員が現れ、お茶の用意から始まり。
豪華なティータイムが始まった。
どこぞのお茶会か疑う程の豪華なケーキにお菓子が並べられた。
その後は数名の女性が現れアイリスをサロンに連れて行き俺は何故か燕尾服に着替えさせられ、舞踏会に連れていかれる。
「ユーリ様」
「アイリス!」
俺が待つ事一時間後、アイリスはドレスアップをした姿で現れる。
シンプルなエンパイヤドレスだったが、細身のアイリスはコルセットをしなくてもスタイルが良くとても似あっていた。
腰元のベルトは黄金で、ブレスレットはシルバーと。
本当に美しかった。
「美しい…女神も嫉妬する美しさだ。アイリス」
「そっ、そんな…」
だが、他の男の視線まで奪っているのはいただけない。
アイリスが魅力的なのは俺が誰よりも知っていた。
すらりと背が高く、細身でオペラ歌手にも負けない美しい体系なのも。
だが、実家では型崩れなドレスを着せられていたのでアイリスの魅力は存分に引き出されていなかった。
だが、ウィンディア辺境伯爵家ではアイリスに似合う服やドレスを母上が採寸して着せていた。
「しかしこのドレス」
腰元のベルトにある紋章を見て嫌な予感する。
「ええ、絹のドレス。しかもベルトは本物ですよね」
「ああ」
腰元のベルトは金をあしらい、ブレスレットも白銀だ。
そして髪飾りの薔薇は青で靴は硝子でできているので、一式で馬車一代と名馬が買える金額だ。
いくら母上でもここまでそろえるのは難しいはずだ。
「お客様、こちらを」
「え?」
フットマンが現れ、差し出したのはショールだった。
「あの、このドレスや靴は何方が」
「いや、花束にメッセージカードが」
俺は匿名希望で書かれたメッセージカードを見ると正体が誰か解った。
白いドレスは風になびくと白い薔薇のようで、ベルトには薔薇の紋章。
花束は赤い薔薇。
これは王妃陛下だ。
「ユーリ様」
「お前への門出だ」
薔薇は薔薇でも普通の薔薇ではなく、造花だった。
しかも宝石が散りばめられている。
「一時間前に、速達便で届きまして。お客様宛てでして」
通常船旅の場合、荷物を届ける便がある。
ただし、料金は高く、貴族御用達の便なのだが。
王妃陛下は俺達が駆け落ちする事に気づいていた?
ドレスを見れば昨日今日で作ったとは思えない。
それに、このドレスは舞踏会以外にも、通常のドレスにできるように作られている。
万一金銭的に困れば売ることもできる。
「あの方は全てお見通しだったのか」
「私は、果報者ですわ」
俺達は沢山の人に守られていたんだな。
船の準備をしてくれた兄上。
黙って俺達を逃がしてくださった両親や国王陛下。
本来なら国外追放にせず謹慎させることもできた。
なのにあえて国外に逃がしたのは、慈悲でもある。
俺達が自由に生きれるようにとご配慮くださったのだろう。
人は一人では生きていけないと先人は言うが、その通りかもしれない。
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