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5.家族は味方~ルカーシュside
しおりを挟む国外追放を告げられ王宮を出て行った二人を他所に私は窓から見える合図を見て安堵した。
「何とか合流できたようです」
「そうですか」
母上は表情こそ出さなかったが声だけは安堵していた。
「姉には私が急いで手紙で伝えました。きっと快く受け入れてくれるでしょう」
「はい」
表向きは息子を勘当したように見える母上だが、そんなつもりは一切ない。
公の場で婚約破棄をしてしまったのだから致し方ない。
「私は何時まで続ければいいんだ」
「父上はしばらくその顔でいてください」
実は今回の騒動に関しては共犯者だった。
最初からイライザとの婚約を結ぶつもりはなかったのだが、ステンシル侯爵家に強引に押し切られ、噂まで流されてしまったのだ。
既に噂は出回っている。
何度も反対したにもかかわらずステンシル侯爵夫人が勝手に話を進めていた。
イライザの婚約が破談になった当初は、私達も心配して気を紛らわせようとした。
アイリスの姉君を悪しざまに扱うこともできず、根が優しいユーリも気晴らしに付き合ったが、それが仇となったのだ。
その所為で勝手にイライザに好意があると勘違いしたステンシル侯爵夫人にイライザ。
ローズマリーまでも勝手にノリだして噂を広めてしまった。
アイリスは傷心の姉に婚約者を譲れと強要された。
彼女の性格を解ってながら告げるなんて惨いと思ったが、彼女は初めて抵抗をした。
しかしそんなことを許すはずもないステンシル侯爵夫人。
本当に血の繋がった母親かと疑いたくなるぐらいだったのだが、一番質が悪いのは父親だ。
娘達を平等に可愛がっているつもりらしいが、姉妹の格差については長い間気づいていなかった。
妻に言われたからなんて理由が通るわけがない。
気づいてもアイリス嬢が許してくれたからと胡坐をかいでいた。
「母上、今後はいかがなさいますか」
「領地に引っ込むわ。私は精神が参ってしまい病気で倒れた事にするわ」
「私もしばらく領地にいよう…これ以上巻き込まれたくないからな」
母上は今回の一件を相当怒っている。
社交界で母上の立場は強く、母上がお茶会の席を途中で退出すれば、その貴族は爪はじきに合う。
国王陛下にも一目置かれる存在だからな。
侯爵家はとんでもない相手を敵に回したのだ。
母上は不誠実な行為を一番嫌う。
貴族社会で生き抜くには綺麗なだけでは生きていけないのは解っているが、彼等のしでかしたことは人として最低な事だった。
婚約破棄を突きつけられたからと言って、何処の世界に次女の婚約者を長女の婚約者にする馬鹿がいるんだ。
本当にありえないだろ。
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