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第二章
56幸せの花嫁
しおりを挟むその半年後、二人の結婚式が行われた。
季節はまだ肌寒さを感じる春だった、花が咲き始めた頃で演技も良く春の花嫁おなった。
他所の国では六月の花嫁が主流だったが、花が咲き始めるこの季節に一番美しい花が花嫁という意味合いを込めたのだ。
色鮮やかに咲き誇る花と春の女神に祝福を受け、結婚式は国民も見守る中多くの者が祝福をした。
「綺麗だぞ…ぐずん」
「旦那ざばぁ…」
近くで見守る父と侍女も涙ながらに幸せそうな花嫁を見て涙する。
「本当に良かった」
そして何より二人の晴れ姿を見て喜んでいたのはルクスだった。
「ルクス、君が一番うれしそうだな」
「そうか?」
結婚式に同席していた勇者一行は誰よりも二人を心配していたのはルクスだと理解していた。
だからこそ一番喜んでるのではないかと思った。
「あの二人はある意味似ているんだよな。自分に対しては雑すぎて」
「そうだな」
「だから歯がゆかった。もっと好きに生きればいいのに…もっと自由に生きればいいのに」
しがらみが多くて逃げたくても逃げられない。
例え逃げ道を用意しても自分の運命から逃げようとしない二人を愛おしく思う一方で歯がゆく思った。
「俺が魔法使いになったのはあの二人が笑える世界にしたかった」
「ルクス…」
魔法使いと言っても幼い頃は出来損ないで、本当に未熟だった。
小さな花のつぼみを裂かせる程度の魔法しかなかった。
そんなルクスの魔法を誰よりっも喜んだのがソフィアとエリオルだった。
二人にとっては幸福を呼ぶ魔法使いだったのだ。
その言葉と思いが嬉しかった。
その昔、戦闘で重宝されていた魔法使いだが、魔法とはそもそも戦争に使うものではないとある大魔法使い。
「俺にできるのはこれだ」
杖を出してルクスは小さな魔法を発動させる。
「花だ…」
「満開の花に花吹雪!」
空を舞う花びらが踊っているようだった。
「結婚おめでとさん!」
「ルクス!」
「ありがとう!」
末永く幸福であることを願い魔法をかけた。
こうして結婚式は素晴らしい物となったのだが…
これで終わるはずはなかった。
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