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第二章

53最悪な環境

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尋問を終えた後にもう確認することはなく牢屋に放り込まれたが、そこにはほかにだれかいた。


「誰よ…」


部屋の隅っこに座り込んでぶつぶつ独り言を言うのは不気味だった。
明かりもないなら余計君が悪い。


「ちょっと何なの…ママ?」

僅かな明かりと、ぶつぶつ独り言を追っている女がこちらを向いた。


その人物はバーバラの実母だった。
美しかった母の髪は白髪になり顔はシミだけで恐ろしい老婆だった。


「ひぃ…」

「バーバラ」

ふと娘に気づいたのか手を伸ばそうとするも、バーバラは距離を取る。


「何故逃げるの」

「いや…誰よアンタ!ママじゃない!」

声は母だったが、老婆となった姿を拒絶したが。


「アンタの所為よ」

「え?」

「アンタの所為だぁぁぁぁ!」

いきなり頬を殴れて唖然とする。
これまで誰にも殴られたことは一度もなかった。

殴る側だったのだ。

「やめっ…がぁ!」


頬を殴られた次は押し倒され首を絞められる。

「アンタの所為ですべて手に入るはずだった…なのにアンタが上手くやらないから。何のためにお前を生んだのよ。下級貴族のあの男の子を生んで公爵家に入り込んで愛人から正妻になって…もっと上に行けると思ったのに」

「ぐああ」

「なのに本当に役立たずで顔しか能のない女。何でしくじった…お前を生んだ意味がないじゃない!こんなことならお前なんて産まなければよかった…こんな役立たず」

「やめ…」


(何で…何で何で!)


バーバラはずっと母親に愛されているとばかり思った。
なのに、本当は愛されていなかった。

所詮は自分が乗りあがる為だけの道具に過ぎない。

愛などなかった。


「わた…しを…あいして…」

「愛?そんなものないわ」

「そんな…」

息が切れそうな中絶望的な言葉が告げられた。

「一度だってアンタを愛したことはないわ。私はアンタなんて一度もね?」

するりと頬に手を置かれる。

「だって愛されたこともないんだから。解らないわ」

「でっ…でも」

「アンタだって誰も愛していないでしょ?なのに愛されるなんて思ったわけ?馬鹿ね」

(嘘だ…嘘だ!)


自分は愛されていると思っていた。
義父にも母にも。


「だって…」

「何でも我儘を聞いてくれる義父?欲しい物はすべて与えてくれる?」

声も出せなくなるバーバラは目で訴えた。


「愛なんてないわ。物だけ与えていただけ…情もないわ」

「そんな…」


真っ暗な世界に引き込まれたバーバラは泣くこともできなかった。
この後待っている絶望を考えるともう泣く気力もなかったのだから。


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