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第二章
51侍女の末路
しおりを挟む暗い牢屋の中であざ笑う声だけが聞こえてくる。
薄暗い牢の中は冷たくて、惨めな気分になる。
(どうして私はここにいるの)
洗面器とタオルと鏡だけが置かれている。
鑑に映し出された姿はかつての自分ではない。
「この顔が私…」
震えながら鏡を素手で殴る。
手から血が流れ痛みが走るが痛いのは手よりも心が悲鳴を上げていた。
「こんなの私じゃない。ここにいるべきは私じゃない!」
醜く老いた表情の自分を見て否定をしたが鏡を素手で割る程の腕力はない。
殴っても手から血が流れるだけだった。
「あぁぁぁぁ!」
声にならない悲鳴を上げながら憎悪の思いが膨れ上がる。
こんな狭い牢屋に入れられ、いつ出られるか解らない。
もし出られたとしてもお日様の下に出るわけじゃない。
地位も財産もすべて失った後に流罪になるか、それとも永遠に牢から出られないか。
もしここから出られても、どう生きて行けばいいか解らない。
既に牢屋にも貴族派は総崩れという噂が耳に入り、先ほど見張り役が言っていた言葉が繰り返し木霊する。
「私はこんなところで終わるはずないのよ!こんな!」
すべてを手に入れるはずだった。
なのに最後は何も手に入ることもなく一人だった。
「私よりも無能な連中は幸せになって私が何でこんな目に合うのよ」
計画通りに進んでたらエリオルの妻の座になれたかもしれない。
なれなくてもソフィアを追い落としていればとも思う。
(すべてあの女の所為だわ!)
自業自得であるのに未だにソフィアの責任にしていた。
「おいいい加減にしろ!」
「煩いぞ」
あまりにも騒音が酷かったので見張り役が注意をしに来た。
「何だ…これは」
「血だらけだな」
手から大量の血を流す姿を見て顔を顰めた。
別に心配してるとかいうのではない。
血を浴びている姿に若干引いているのだ。
「頭がいかれたのか」
「前々からおかしいとおかしいと思ったが」
「とにかく静かにしろよ。下手に自殺でもされたら面倒だ」
傷の手当てをするわけでもなく、怪我の心配もすることもなく背を向ける二人はそのまま去って行くが…
「待ってよ!私は…出してよ!」
「は?」
「私は何も悪くないわ!悪いのはバーバラとあの女よ!ソフィアとかいう隣国の女よ!」
見張り役に自分が被害者であることを訴えソフィアの事を大声で悪口を言い続けるが、二人は気にも留めない。
むしろ頭がおかしくなった女の言葉に耳を傾けることなどなかった。
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